白馬の再開発
2009年 04月 05日
しまっている。が、小学生の低学年から親しんだスポーツなので、私は
スキーが嫌いというわけではない。
むしろ今でも「奥志賀」「天神平」「万座」「白馬」等のスキーリゾートの名称が
ニュースなどを賑すと、なんともいえない郷愁にとらわれる。
先日、ペニンシュラ東京で開催されたACCJ(在日米国商工会議所)の
ランチョン・セミナーに行ってきた。
タイトルは"Is this the right time for hotel investment?"
つまり日本に於けるホテル投資の現状と将来をパネル・ディスカッション
するという内容。
この席で、米系証券会社であるウォーバーグの日本法人が
長野県白馬村の「白馬フォーティセブン」の株式を買い取り、大々的に
再開発を行う計画があることを知った。
現在ある同スキー場の土地11.6ヘクタールに、1期、2期工事で
総額200億円を投資し369室の高級ホテルとコンドミニアム、
アウトレットモールを建設するというもの。
1期工事は今年度に着工、2年後の竣工を目指す。
完成すればアジア有数のスキーリゾートが出現することになるが、
既に本年3月の白馬村環境審議会で建設が妥当との決定が下された。
私の商売柄、スキーリゾート関連の人たちと話す機会が多い。
彼らが指摘する日本のスキービジネスの特徴はいくつも挙げられるが、
ポジティブな点は:
1.産業として確立していて、国内の認知度が100%近い。
2.鉄道・道路等のインフラ設備が整っている。
3.温泉等アフタースキーのコンテンツが豊富。
逆にネガティブな点は:
1.文字通りお天気頼み。雪が降らなかったら当然、降りすぎても交通規制
等で商売にならない。
2.欧米に比べ「富裕層」のレジャーではなく、ファミリースポーツとして
捉えられている。ホテルやレストランで消費する金額も高くなく、宿泊施設
での平均滞在日数は2泊以下。
3.一般的に施設が老朽化、陳腐化していて、ハイ・エンドな層を取り込め
る魅力がない。
将来的には:
1.近隣諸国にこれだけのスキーインフラはないので、インバウンドビジネス
としてポテンシャルが高い。
2.スキー場施設の老朽化が進んでいるので、今後建て替え、再投資等の
ビジネス・チャンスがある。
また将来の不安材料は:
1.温暖化による降雪量の減少。
2.スキー人口そのものの減少傾向が止まらない。
といったところだろうか。
北海道・ニセコが近年オーストラリアからのスキー客で大賑わいだったのは
記憶に新しい。今シーズンは様々な理由からこの白馬地区にシフトしている
のも、白馬フォーティセブン再開発の追い風になっている。
パネリストは他にヒルトン・ホテルズVPのオデット・リフシッツ氏。
ホテル・オペレーターの立場から業界の諸事情について分かり易く説明して
くれた。
ジョン・マーダー氏はゲンスターというデザイン事務所の建築家。
ゴールドマン・サックスがREITに出したホテルのリノベーションを担当して、
沖縄でのホテル開発事例について説明してくれた。
司会はボヴィス・レンドリース・ジャパンのプロジェクト・マネージャーである
板倉大輔氏。
限られた時間内で、かつ逆風が吹いているホテル投資事業の展望を丹念に
パネリスト達から引きだすという難しい作業をこなしてくれた。
白馬フォーティセブンの代表・髙森健太氏は、何といっても今の時期に
積極的に投資する姿勢が凄いなと思う。
ところで今回のブログ作成の際の画像情報を集めていると、"flickr"
というサイトに白馬周辺の素晴らしい写真が載っているのを見つけた。
早速当ブログで拝借しようとすると、なんと一連のこの作品は高森氏
本人のものであることが判明。
写真は上から高森氏の作品。「白馬フォーティセブンより眺めた五竜岳」
中は開発計画中の白馬フォーティセブンのサイト俯瞰図。長野県白馬村の
公式サイトより。
下は会場風景。終了後も参加者同士の熱っぽい懇談が続いた。
↓ は高森氏の他の作品。「八方尾根 南面」
一連の氏の作品を見ると、彼自身が相当冬山に造詣が深く、且つ白馬に
強い思い入れがあることが伝わってくる。
私が嘗て仕えた堤清二がインターコンチネンタル・ホテルズに彼の
「夢」を投影したように(2008年11月12日のブログを参照ください)、
高森氏も事業だけでない何かを白馬に思い描いているのかもしれない。
彼のような顔の見える事業主・投資家が主導するリゾート開発事業が
どのように展開していくのか、大いに楽しみである。
氏の作品は http://flickr.com/photos/takamori で鑑賞できる.