ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

「天国と地獄」

GW中、DVDで黒澤明監督の「天国と地獄」というサスペンス映画を
鑑賞した。学生時代に飯田橋の名画座でこの作品を観て以来、
2度目である。

1963年の作品で、出演は三船敏郎、仲代達矢、山崎努 他。

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舞台設定は戦後復興期の横浜。
高台の豪邸に住む会社重役・権藤(三船敏郎)の息子が何者かに
誘拐される。犯人(山崎努)は身代金三千万円を要求してくるが、
犯人の手違いで権藤の息子ではなく、運転手の息子を誘拐して
しまう。

権藤は会社の持ち株のマジョリティを獲得する為、その三千万円が
どうしても必要だった。株が無ければ自分の地位が危ない。
靴の修理工から叩き上げ築き上げてきた地位が脅かされるのだ。
が、運転手は土下座をつき、身代金を払ってくれと懇願する。
困惑する権藤。

身代金と人質との受け渡しの場面。特急「こだま」の洗面所の窓を
明け、身代金の入ったバックを神奈川県の酒匂川鉄橋で投げ落とす。

人質は無事還り、警察の捜査がはじまる。が、権藤は社内で失墜して
しまう。
当初は権藤の去就に反感を持っていた警察だが、権藤の人間性に触れ
尊敬を抱くようになる。冷徹なエリート警部(仲代達矢)が、権藤の為にと
犯人を刻々と追い詰めていく。

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日本映画の中でも最高傑作のひとつとされるこの作品の魅力を
挙げたらきりが無い。
身代金受け渡しのシーン、山崎努の演技等が真っ先に挙げられるが、
それらに加え私の感想としては以下の通り:

1.実に丁寧に脚本が書かれている。例えば当初反感を持っていた警察が、
何故権藤に尊敬の念を抱くようになり、酷暑の中の苦しい捜査の
モチベーションに成る程になったか等、感情移入しやすい。

2.効果的なBGM。初めてスクリーンに姿を現した山崎がドブ川べり
を歩く時のシューベルトの「ます」。
そして終盤の逮捕劇の際の「オー・ソレ・ミオ」。
・・・記憶している限り、この2つのシーンでしかBGMは使われていない。

現代映画・ドラマの「これでもか」といわんばかりの盛り上げBGMの
たたみ掛ける様な波状攻撃とえらい違いだ。
それはつまり下手くそな脚本、演出、演技をごまかす為のもので
しかない。

3.横浜という舞台設定。私自身この舞台になった黄金町界隈は良く
通ったし、寿町のドヤ街から瀟洒な屋敷の建ち並ぶ山手地区を見上げ、
「天国と地獄」の舞台設定そのままだな、と思ったことがある。

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ただ1960年初頭のあの界隈があのような喧騒と麻薬・貧困の蔓延する
魔窟(まくつ)だったとは知らなかった。
尚、私が足しげく通った80年-90年にも名残は多少あったが、2005年頃
には黄金町駅周辺は整備され綺麗になり、フツーの町になってしまった。

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実は「天国と地獄」の前日に今話題の「おくりびと」も観た。
美しい映画で、外国人に受けが良いという事も理解できる。
納棺師の仕事は死者を洗い清めるだけでなく、ご家族の悲しみを和らげる
ものなのだと素直に感動。
案外身近な存在なのだと改めて気付かされただけでも、価値がある映画と
言えよう。

が、納棺師の仕事はあんなキレイなものじゃない。
葬儀社に勤める知人から直接聞いた事があるのだが、人に様々な死因がある
のと同様、死体にも様々な形状があるのだ。詳しい描写はここでは避けるが。

映画ではその点の違和感が最後まで拭えなかったのが残念。
久本譲の音楽は・・・流石にマンネリ感が否めない。曲を作り過ぎとちゃう?

また偶然にも「天国と地獄」同様、山崎努が「おくりびと」でも重要な役を
担っている。
彼はもう大ベテランだが、日本を代表する両作品で画面を引き締めている
ところは流石だ。

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by Mikio_Motegi | 2009-05-09 23:20 | ブレイク