桐生の棟方志功
2009年 06月 14日
を代表する大芸術家だ。
独特の作風と、「わだばゴッホになる」と言い切るほど苛烈な人生、
そして幼少時代に事故で殆ど失った視力を補う為、顔を殆ど版木に
くっつけるようにして作品に取り組む姿は幾度かドキュメンタリーで
放映され、また渥美清、片岡鶴太郎、劇団ひとり等主演でテレビドラマ化
されているのでご存知の方も多いだろう。
その棟方の壁絵を見る機会に恵まれた。場所は私の郷里である群馬県
桐生市の「芭蕉(ばしょう)」という西洋料理店。
1953年に縁あって桐生に投宿していた当時全盛期の棟方は、
芭蕉の主人であり且つ芸術愛好家としても地元で有名だった
小池魚心(こいけ ぎょしん)氏と意気投合。
当時「馬小屋」という愛称もあった芭蕉に、馬をモチーフにした壁画を
描いて見せた。
作品は幅3メートル、縦2メートル近くの大きなもの。が、作品の出来に
不満だった魚心氏は、完成翌日になんとこの絵ごと壁全体を漆喰
(しっくい)で塗り固め覆ってしまう。
私はこのエピソードは、魚心氏と遠縁にあたり且つ交遊のあった私の
亡父から聞かされて知っていた。
ところがこの幻の作品が、魚心氏の子息である現店主の英断で漆喰を
剥がし、50年ぶりに現代に蘇ったのである。
芭蕉のある「糸屋通り」は、当時隆盛を誇った桐生の織物産業の
栄華を偲ばせる。
また芭蕉の佇まいは昔から独特で、店内は今も変わらず超レトロ
な民芸調。両親に連れられ子供の頃は何度も通った私としては、多分
30年ぶり
の再訪であった。
作品の私の評価は・・・良くわかんね(桐生弁)。
店内が暗いのと、ビールを飲んで酔っ払っていたので。
でもこうして撮った写真を改めて眺めると、なんだかシャガールの絵
みたいでもある。
棟方らしくなく、芭蕉の民芸調な雰囲気にも合わない作品の
完成を目の当たりにした際の魚心さんの心象たるや、いかばかり
だっただろう。
写真は上から棟方の代表作の一つ「門世の柵」。「はてなキーワード」より。
中2枚が「芭蕉」。
下が今回蘇った作品。