ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

おひとりさま 

「おひとりさま」というタイトルのテレビドラマの放映がはじまった。
もとよりその時間にテレビドラマを見ている時間も余裕も無い私だが、
「おひとりさま」という言葉にはある思い出、感慨のようなものがある。

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ところで「おひとりさま」という表現が実は登録商標で、承諾なしに勝手に
その言葉を使うことを禁じられていることをご存知だろうか?
「おひとりさま向上委員会」 http://ohitorisama.net がこの
コピーライトを所有している。

「おひとりさま」とはジャーナリストで作家の故岩下久美子さんが考案
したもの。
彼女の唱えた「おひとりさま」の理念を簡単に表せば、
「ひとりでも生活をエンジョイできる大人の女性」ということだろうか。

別に独身である必要はなく、既婚者でももちろんかまわない。要するに
群れず、妥協せず、やせ我慢せずに生活をエンジョイできる女性に
なりましょう、というのが故岩下女史の唱えたかった理念なのだ。

そして岩下さんが起こした具体的なアクションは、女性がひとりで訪れても
奇異な目で見ないレストラン、ホテル、旅館を一軒でも多く増やす啓蒙運動
だった。
特にその頃の温泉旅館など、女性がひとりで訪れようものなら、それこそ
地元の男を逆ナンパに来たかそれとも自殺願望者としか見られなかった
時代だ。

岩下さんや彼女の仲間達は粘り強くホテルや旅館、旅行代理店と交渉を
続けた。
その結果「おひとりさま」がマーケットとして潜在需要があることを認識した
それらの施設は、「おひとりさま宿泊プラン」を企画造成し、特別な
アメニティを用意したりして、徐々に認知するようになってきたのである。

ちなみに岩下さんは2001年9月1日に旅行先のプーケットで事故死を
遂げているが、私はその4日前に、東京で彼女を囲んで会食をしている。
その時は私はシンガポール在住しており、日本にはセールスコールで
一時帰国していた。
集まったメンバーは高名なホテル・メディアの編集長、外資系の
ホテルコンサルタント、独立系ホテルコンサルタント、会員制高級ホテルの
総支配人とそのアシスタント、そして岩下さんという刺激に満ちた面々。
当時で赤道直下の国々のホテルに6年も勤務していた私が、相当場違いな
存在だったのは間違いない。

だが私の真正面に座った岩下さんは、そんな「浦島太郎」の私にも
「おひとりさま」の地位向上の取り組みについて情熱的に語ってくれた
ものである。

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先日久しぶりに新宿のパークハイアットにある「ニューヨーク・グリル」を訪れた。
日本で最も予約の取りにくい最先端のレストランのひとつだが、そこでの
ランチタイムにひとりで食事を楽しんでいる女性客を数名みかけた。
彼女達は別に肩肘張るでなく、サーブされる間も虚空をみつめたり景色や
周囲を眺めたりして、違和感無く溶け込んでいる。
スタッフに聞くと、ここではランチだけでなくディナーでも女性の一人客は
多いようだ。

・・・もちろん会社人間が群れたり妥協したりして徒党を組み、昼食時はほぼ同じ
メンバーで連れ立って食事に出かけるのは、或る意味重要な政治的行為で、
共同体の一員である事を確かめる儀式でもある。

だがパークハイアットの光景と「おひとりさま」のテレビ放映があいまって、
故岩下女史が唱えた理念がようやく根付いてきた事を私は素直に喜びたい。
また現在の「おひとりさま向上委員会」が、彼女の理念、意思を引き継いで
確実立派に活動を続けていることを祝福するものである。

岩下女史の足跡、顔写真は上記「おひとりさま向上委員会」のホームページに
詳しく載っているので是非ご覧頂きたい。

そこでもわかるように、彼女はジャーナリストとして有能だっただけでなく、女性
としても実に魅力的だった。
上記の会食の僅か4日後に岩下さんはプーケットで事故死したわけだが、
事件の一報を新聞の夕刊で知った出席者の某氏の、その時の悲嘆の
くれようといったらなかった事実が、彼女の魅力の一端を示している。
・・・何があったかは知らないが。
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by Mikio_Motegi | 2009-10-25 22:20 | ブレイク