ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート
2010年 01月 04日
管弦楽団(ウィーン・フィル)による「ニューイヤー・コンサート」の生中継を
観ることにしている。これが無いと正月を迎えた気がしない。
ニューイヤー・コンサートは1939年から続く、60年の歴史を有する
コンサートだ。会場はウィーン楽友協会の黄金のホール。
今年はフランス人のジョルジュ・プレートルが指揮をとった。
彼は既に85才。コンサートの史上最高齢の指揮者だ。
曲目はウィーンに関連の深い作曲家の作品が毎年選ばれており、
特にヨハン・シュトラウスとその息子達の作品が好まれている。
今回も冒頭に「こうもり序曲」、アンコール最後に「ラデツキー行進曲」
が演奏された。
また毎年「美しく青きドナウ」が演奏されるが、第一楽章の途中で突然
中断し、指揮者が観衆に新年の挨拶の辞を述べるというお決まりの
セレモニーが続く。
曲目は全部で18曲ほど。第一部と二部の間に15分ほどのインターバルが
入る。例年のNHKの放送だと、この時間にNHKのスタジオに映像が
移り、音楽評論家や識者による座談が放映される。
ところが今年は、コンサートと同時中継されるバレエの練習風景や、
衣装のデザイニング、仮縫い(デザイナーはあのバレンティノ本人!)等の
舞台裏の様子をたっぷりと見せてくれた。
多分、オリジナルの放送では毎年これを放映しているのだろう。
もちろんこっちのほうが断然良い。
ところでいつも感じるのだが、このコンサートに関る全ての事物の絢爛豪華さ
は一体何なのだろう?
会場の楽友協会ホールのインテリア、北イタリアのサン・レモから毎年届く
数万本のバラ、バレエを収録したウィーン美術史美術館の総大理石造りの
デコレーション、そのバレエを踊るのがパリ・オペラ座と地元ウィーン・オペラ座
のバレリーナ達。
ちなみにバレンティノは自家用ジェットで会場入りしている。
一体このお金のかけかたは何なんだ?収支報告を見たいわけではないが、
誰がどれだけお金をかけてこの絢爛豪華なショウを実現させるのだろう。
スポンサー企業の財力も相当なものだろうが、やはりハプスブルク家の栄華、
ヨーロッパの富の蓄積はハンパではない。
そしてその蓄積はどこからもたらされたのか・・・。
下世話な話が続くが、コンサートチケットの殆どはインターネットによる
抽選により取得できるだという。
来年の分は既に受付が始まっており、シートの正規料金は30から940
ユーロ(約3500円~12万円)だ。
ところがこのチケットはダフ屋に流れ、毎年異常に高騰する。
日本の「ラグゼ銀座マロニエ」という旅行代理店では最高位のシートを
1枚4200ユーロ(50万円)で販売していているが、これはかなり良心的だ。
私がインターネットで調べた海外のサイトでは、5600ユーロ(67万円)の
値段が付いていて、しかもシートの場所はギャランティされていない。
・・・チケット一枚のこの値段が高いのか安いのか、私には判断できないが。
毎年気がつくのが、放映で映し出されるアングロ・サクソン系の観客で
埋まっている会場に、日本人の姿が非常に多く見られる事だ。
ちなみに今年は日本人以外の有色人種は台湾系と思われる紳士が
1名のみで、他は誰もいなかった。
これは単なるカメラワークの問題なのか、唯一の非アングロ・サクソン系
の観衆として日本人を誇っていいのか、それともヨーロッパの
descriminationの厳然たる事実の表れ、と見るべきなのか。
無料でTV放映されるこのコンサートを、家のリビングで鑑賞しながら、
ヨーロッパ文化に思いを馳せるのもまた正月の楽しみの一つである。
写真は上からコンサート会場のウィーン楽友協会黄金のホール。
http://media.yukasee.jp
指揮者のジョルジュ・プレートル。www.wienerphilharmonikar.at
とても85才とは思えない、若々しい指揮ぶりに驚かされた。
バレンティノ(イメージ画像)。
ウィーン美術史美術館の内部。
ウィーン楽友協会黄金のホールのシート配列図
www.euroteam.info
コンサートの指揮風景(イメージ画像)。後ろに観客席が見える。
今年も最高位の桟敷(さじき)席で、演奏をじっと聞き入るある日本の
財界人と、奥様とおぼしき人の様子が何度も映し出された。
私が嘗て東京の歌舞伎座で「勧進帳」を両親と見た時、チケットを
事前に購入する際に母が「絶対に桟敷席を取ってはダメ。テレビで顔が
映されてしまうことがあるから」と言っていた事を思い出す。
その時は「何て自意識の強い母親なんだ」と呆れたものだが、今はその
意味がよく分かる。
皆さん、TV中継が入るような有名なショウを観る時は、決して桟敷席に
座ってはいけません。特に「訳あり」の同伴者がいる時は。