私の喫煙事情
2010年 02月 27日
健康増進法に基づき飲食店を含む公共施設を原則、全面禁煙にすべきだとの
通知を都道府県などに出した。不特定多数の人が集まる公共施設と、
その周辺道路の全面的禁煙が各施設に求められるようだ。
愛煙家にとってますますやりづらい世の中になっていく。
私自身はタバコを止めてこの2月で丸21年になる。
当時まだまだ愛飲派が圧倒的だった中で、禁煙を思い立った理由は二つ。
一つは、当時交際していたアメリカ留学帰りのキャビン・アテンダントの
女性に強く、執拗に禁煙を迫られていたから。
もう一つは、多少の自意識から。
当時勤務していた芝パークホテルで、フロント係からセールス部に異動になり、
外回りをするようになった。
先輩社員に連れられての得意先回りの途中、休憩で立ち寄った喫茶店では、
私たちと同じような身なりのセールスマンの群れが、一様に
うだうだとたむろして時間を潰していた。もうもうたる紫煙の中で。
それは私が勝手にイメージしていた、セールスマンの颯爽たる姿とは
かけ離れていた。
なんだか捕虜収容所にいるように思えてきて、「こんなセールスマンには
なりたくない」と強烈に意識し、事始めに禁煙を思い立ったのだ。
今思い返すと「若気の至り」である。その時は他人が自費でどこで何を
していようと、自分には関係ないと割り切る事が出来なかった。
私は決してタバコが嫌いなわけではない。
事実数年前までは完全禁煙ではなく、1年に数本は喫煙することがあった。
特に東南アジアにいた頃は、タバコならぬシガーを愛飲していた。
私の好きなシチュエーションとして、屋外で特大のステーキに挑みながら
ふかすシガーがある。
夕暮れ時、赤道直下の圧倒的な夕陽を眺めながら、気の合う友人と
コンドミニアムやホテルの屋外のプールサイドでふかすシガーの味は
堪えられない。
長大なシガーは1本を吸い終えるのに1時間以上かかることもある。
網焼きした1ポンドもあるTボーンステーキに挑みながら、赤ワインを傍らに
置いて、合間にシガーをふかすのだ。
禁煙運動の本場といえばアメリカだが、全てのビジネスエリートが禁煙して
いるかというと、そんなこともない。
私がジャカルタのシャングリ・ラに採用面接を受けに行った時、
たまたまアメリカ人GMの自宅で催された大規模なホームパーティーに
呼ばれる事になった。
アルコールが入り生バンドの音楽が流れる。濃密なジャカルタの闇夜の中で、
日頃の強烈なストレスから解放され、リラックスしたGMをはじめ
欧米人の幹部連中が、隣の部屋で何やらこそこそとやりはじめた。
そこでは奥方連中に見つからないようにして、彼らが一様にタバコを融通
しあい、美味そうに吸いだしていたのだ。
その光景を見た時は驚かされた。欧米のビジネスマンの表と裏というか、
本音と建前の一端を垣間見た思いがしたものだ。
もともと人類が猿から進化し、火を使うようになった頃からつきあいのある
タバコ文化だ。異文化のコミュニケーションにどんなに役に立って
きたか、その功績は計り知れないだろう。
茶道でも「煙草盆(たばこぼん)」といって食事後のお薄の前に
煙管(キセル)を提供するという作法もある。
要するにこの問題は愛煙家のマナー向上に帰結するのではないだろうか。
繰り返すが、冒頭に挙げた受動喫煙のように、子供も食事をしている狭い
レストランでの喫煙は慎むべきだし、歩きたばこは本当に危険な行為なので
厳に戒めるべきだ。
その意味で分煙は絶対に正しいし、私も大賛成だ。
ではタバコの効用を頭から否定するのではなく、いかに喫煙マナーを向上
させるか?
タバコ文化の存続、いつまでも安心してたばこを吸える世界は、タバコ
愛飲者のマナー向上如何にかかっているのである。
写真は皆イメージ。
イラストはJTのホームページから。「煙草盆」を検索すればヒットする。
↑ これは昨年10月にオープンした「星のや京都」の佇まい。
同社のHPが禁煙普及への真摯な取り組みと解釈するか、fanatic と
解釈するか別にして、(株)星野リゾートの採用サイトは興味深い。
http://recruit.hoshinoresort.com