日本一のすき焼き
2010年 06月 05日
この調理方法に「関東風」と「関西風」の違いがあるのを、ご存じだろうか?
関東風は、みりんやお酒で作った「割りした」というダシを鍋に入れる。
熱して沸騰した後、肉や野菜、豆腐類を入れ煮込み、火が通ったら頂く。
「焼く」、というより「煮る」ので、すき焼きではなく牛鍋と表現した方が
適切なのではないか?
そんな関東風に馴染んだ私が、京都 寺町三条の「三嶋亭」で
味わったすき焼きに衝撃を受けたのは言うまでもない。
こちらではまず熱した鉄鍋にザラメ風の砂糖を適当にのせ、その上でいきなり
肉を焼きはじめる。ピンクの肉に焼き色が付く寸前に濃い口のしょうゆをかけ、
出来上がり。溶き卵とからめて頂く。そしてこの最初の一枚が、絶品なのだ。
次に再び鉄鍋に砂糖を敷き、野菜、ねぎ、キノコ、麩を乗せ、頃合いを
見計らって次のお肉を焼く。これの繰り返し。
三嶋亭は明治6年創業、130年も続いている老舗だ。
肉と言えば豚肉を連想する関東人と違い、京都では牛肉のことを言う。
例えば今日は「カツ」を食べようといえば、トンカツではなくビフカツを差すのだ。
それほど牛肉料理の浸透した京都で、数あるすき焼き料理店の中でも
三嶋亭はナンバー・ワンにランクされている。
約20年前、当時私はヨコハマ・グランド・インターコンチネンタルホテルの
関西地区担当の営業マンだった。
京都の地場の旅行代理店とヨコハマにシリーズで年間5000室の送客契約を
結んだ私は、そこの専務と営業部長を招いて三嶋亭で接待をしたことがある。
接待に三嶋亭を勧めてくれたのは、知り合ったばかりの今の家内だ。
ヨコハマ側からは私と、大阪駐在営業のI君。
地元出身の専務も営業部長も三嶋亭は馴染みだったらしい。
一方私は2度目、I君は初めての利用だった。
食事がはじまっても、専務と営業部長は仕事の話ばかり。
もちろん年間5000室の送客となればこれは大仕事で、打ち合わせに
余念がなく食事どころではないのも当然だ。
大仕事であるのは私たちも一緒の筈だが、ところが私もI君も三嶋亭の
すき焼きの素晴らしさに感激し、専務たちの話もうわの空で夢中で極上の
牛肉をパクつく。
「はっ」と気が付いたら、専務と営業部長は殆ど箸もつけてないのに、
私たちの方で全て食べ尽くしてしまい鍋は空っぽという状態に気が付き、
大いに恥いった経験がある。
宮崎の口蹄疫問題で、「種牛」の存在がクローズアップされた。
私たちが「松阪牛」「神戸牛」「近江牛」等と呼ぶブランド牛肉は、元は宮崎や
但馬の種牛を運んで来て、現地で育てたものだという事を初めて知った人も
多いのではないだろうか?
三嶋亭以外にも京都には老舗の牛肉料理店は多い。
この素晴らしい牛肉料理文化の継承の為にも口蹄疫問題が早く収斂し、
いつまでも安全で美味しい牛肉を頂けるようになってもらいたいものだ。
宮崎の皆さん、頑張ってください!
写真は2枚目と4枚目は「スイーツ番町オフィシャルブログ。男のスイーツ」より。
傑作・秀逸のブログなので是非訪れてください。
1枚目と3枚目は寺町三条角にある三嶋亭本店の佇まいと、玄関を入り
下足番さんに靴を預け上がるとすぐにある急な階段。
明治維新を成し遂げた英雄たちがこの風情ある本店に集い、すき焼きを
つつきながら語らいあったのかと想像すると、少々お値段が張るのも
致し方ないかと納得する。
三嶋亭のテーブルと鉄鍋は八角形をしている。「末広がり」の意味だそうだ。
尚、すき焼きを調理する一連のサービスは全て仲居さんが仕切ってくれる。