FIFAワールドカップ1次リーグを総括
2010年 06月 26日
今夜からはもうウルグアイVS韓国を皮切りに決勝トーナメントがはじまる。
せわしないが楽しい4年に一度のお祭りだ。
さて今回の南アフリカ大会の最大の特徴は、同国が南半球に位置するため、
「冬の大会」になった点ではないだろうか?
つまり毎年この時期に開催されるW杯は、酷暑の中で行われる為体力の
消耗をいかに抑えるかが各国の重要な戦略になる。
特に2002年の日韓など、ヨーロッパの選手たちにしてみれば未体験の
梅雨時の高湿度だったので、気候に馴れない強豪国が早々と敗退する
大波乱の大会だった。
その点、南アフリカは涼しい、いや、寒い。運動量とスピードを持ち味にした
チームが活躍する、観ていて大変楽しい大会だと言える。
ラテン諸国が大活躍し、アフリカと北ヨーロッパのチームが苦戦する中、
最大のセンセーションは前回大会で決勝を戦ったイタリアとフランスという
ラテン系サッカー大国の1次リーグ敗退だろう。
イタリアの凋落は分かり切っていた。選手の年齢が高過ぎ。
フランスの場合、人種問題に発展するといけないのであまりメディアは
取り上げないが、代表にアフリカ系の選手が多すぎた事が敗退の最大の
理由だと思う。
このチームはアフリカ系選手個々のフィジカルに頼り過ぎた為、
フランス・サッカーの代名詞である「シャンパン・サッカー」、シャンパンの泡が
はじけるようにフィールド内のあちこちで華麗なアタッキングを繰り返す
サッカーが全く見られず、個人勝負の連動制のないものになってしまった。
「らしさ」を失ったチームは、同時に勢い、求心力、チームワークをも失って
しまったのだ。
下の2枚の写真を見比べるとよくわかる。1998年に優勝したチームと、今回の
チームの人種構成の違いを。
私は1978年から86年までの、ミシェル・プラティ二(現欧州サッカー協会会長)
を中心としたフランス代表が憧れチームだった。今のフランスにはその面影が
全くない。
1998年の優勝メンバーであるブラン次期監督に、トリコロールの一刻も早い
再建を託したい。
1次リーグで最も感動したシーンが下の写真。
イングランドの前主将ジョン・テリーが、負ければ敗退が決まる対スロベニア戦
で見せた炎のダイビングだ。
テリーは相手選手にタックルし一度倒れこみ、直ぐに立ち上がってシュートを
防ごうとした。でも体勢が崩れていたので足が出せない。とっさに彼は頭を
相手のシュートコースに投げだし、これを防ごうとした。
両手を身体にぴたりと付けているのは、シュートが腕に当たりゴール前でPKを
とられるリスクを犯さない為。その代わり彼は後頭部にシュートが直撃する
リスクをとったのだ。これぞ「ライオン・ハート」の真骨頂!
(背番号2のグレッグ・ジョンソンが股間を押さえているのは、かゆいから
...ではない)
隣国・韓国の活躍は予想通り。エースであるパク・チ・ソンが初戦の相手
ギリシャ戦で、相手ボールをかっさらってそのままドリブルシュートを決めた
シーンは鳥肌ものだった。
スピーディーでスタイリッシュ。決勝トーナメント1回戦のVSウルグアイを
制すると、2002年以来のベスト4も夢じゃないかもしれない。
世界ランキング120位の北朝鮮も奮闘した。ラテン気質を丸出しに、本能の
まま得点を重ねたランキング3位のポルトガルを相手に、最後まで頑張った。
あの戦いはを見事な敗戦と言え、誰も非難できない。
帰国しても選手やスタッフを責めないでね、将軍様。
日本の決勝トーナメント進出はまさにセンセーションだった。
我々全国のサポーターから非難された、意味のないボール回しを続ける
「自己満足・現実逃避」のサッカーから、オシム前監督が掲げた「攻撃的な
守備・闘志を前面に出す」サッカーに、岡田監督が大会直前になって切り
換えた事が功を奏したといえる。
もっともこれは自己満足の典型的プレーヤーである中村俊輔のケガで、
戦術を変更せざるを得なかったという背景もある。
もう一つ欠かせないのが、試合に出られない選手たちも含めたチームとしての
一体感を醸し出せた事。
初戦のカメルーン戦で、交代出場した岡崎慎二の脱いだジャージを中村俊輔
が畳んで片づけたと思われるシーンがTVに映った。
彼が本当のエース、日本のキングで無い事の証明でもあるが、それはさておき
もしそれが本当だとしたら、岡田監督は良いチーム作りに成功したと言える。
なかなかやるね!岡ちゃん!!
写真はYahoo!スポーツより。
一番下は大阪・なんばのスポーツ・バーにて大盛り上がりの日本サポーター。
さていよいよ決勝トーナメント。最初からスペインVSブラジル、
ドイツVSイングランドという注目のカードが見られる。
繰り返すが南アフリカは今は冬なので、体力の消耗がそう激しくない。
トーナメントの1回戦から全力モードで戦える、魅力的な大会になることは
間違いないだろう。