ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

読書週間2010

昨年11月1日のエントリーで記したように、私は「読書ノート」なる
物を書いている。読んだ本の気にいったフレーズを抜粋し、簡単な感想を
書き留めるだけのものだが、これを続けるのがなかなか難しい。

私の読むスピードが遅いのに、1冊が読み終わらないうちに新しい本に
つい手を出してしまうので、読了しないのだ。
こうしてせっかく購入したのに常に3-4冊が読み終えられず、その辺に
置きっぱなしになっている。

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さて昨年同様、再読を含みこの1年で読んだ中で、良かったもの、
「くだらねえ」と思ったものを数冊記してみる。


良かったものベスト10 (順不同)

1.散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道 
  硫黄島 栗林中将の最期         梯久美子

2.スクランブル 「イーグルは泣いている」 夏見正隆

3.こころの王国 菊池寛と文芸春秋の誕生 猪瀬直樹

4.古代への情熱                 シェリーマン

5.ヴェニスの商人                シェイクスピア

6.マルタの鷹                   ダシール・ハメット

7.オシムからの旅                木村元彦

8.不道徳教育講座               三島由紀夫

9.菊池寛短編集
  「恩讐の彼方に」「忠直卿行状記」     菊池寛
  
10.ポー名作集                エドガー・アラン・ポー
                          (訳:丸谷才一)
  
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1.米軍による本土空襲から愛する家族と日本を守る為、劣悪な環境下で
鬼人の如く硫黄島を防御する栗林中将とその部隊。
「あとがき」で、「私たち次世代の為に、言葉に尽くせぬ辛苦を耐え、
ふるさと遠く離れて亡くなったすべての戦没者の方たちに、あらためて
尊敬と感謝を捧げたい」との一文に、思わず涙した。

2.著者は航空自衛隊の戦闘機パイロットであるだけに、コックピット内の
描写、表現は秀逸。憲法9条や自衛隊法と現実の矛盾を平明に説き、
日本の防衛のありかたを考えることができた。

3.菊池寛の偉大なところは、物書きとしての自分の才能に見切りをつけ、
自分より優秀な作家たちのプロデュ―サーに徹した事。

4.並みはずれた努力と、懸命に働けば辛い現在から解放されるという
確実な見通しが、シュリーマンを偉大な発見へと駆り立てた。

5.現代においても尚主人公シャイロックの人間像に新解釈がされるあたり、
シェイクスピアは多くの未知数をはらんだ人物像を提供してくれる。

6.「ハードボイルド」の古典。レイモンド・チャンドラーも
ロバート・B・パーカーも北方謙三も皆ハメットの影響を受けた。

7.「バルカンの火薬庫」に生まれ育ち、超一流のサッカー監督として、
同時にいくたびの戦乱を生き抜いた不屈の人として、オシムは常に
尊敬に値する人物。サッカー監督は哲学を持ち、それを語らなければ
ならない。

8.没後40年。ミシマへの評価は固まったのか?「金閣寺」「憂国」
と併せ読むと、底知れぬ人間性、森の奥の沼に佇むようなシニシズム、
ウルトラ保守という多面性が伺える。

9.タイトルの他、「俊寛」「蘭学事始」等、小学校から高校までの
教科書で取り上げられた作品が並び、入りやすい。
ただ「俊寛」の結末等、教科書に抜粋されたものとオリジナルでは
読後感がまるで違う事に気づかされた。

10.「モルグ街の殺人」「黒猫」等、ロンドン、パリ、ニューヨークの
古く暗い石畳の街の情景が脳裏に浮かぶ。重厚な丸谷才一の名訳も。

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読むんじゃなかったと、お金と時間を返してほしくなる本


1.「走ることについて語るときに僕の語ること」    村上春樹

2.「芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか」  市川真人

3.「『言語技術』が日本サッカーを変える」       田嶋幸三

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1.彼は何をぐだぐだとくだらない理屈を書き連ねているのか?
かつてのシャープな切れ味は何処へ?ノーベル賞が遠のいた駄作。
 
2.最近流行りの「・・・はなぜ・・・なのか」というタイトルの新書は、
読むだけ時間のムダと悟らせてくれた一冊。

3.こんな人が日本サッカー協会の要職に就いたら、現場は混乱する
だろうなと心配になる。「言語技術」の卓越した理論と、彼の
サッカー界における素晴らしい経験、知見が全くリンクしていない。
ただし挿入されたエピソードは面白い。

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・・・私はビジネス書、特に新書版はあまり読まない事にしているが、
今年はいよいよその傾向が強まった。
自分に足りない何かを読書で得ようとすると、何十年、時には何百年と
版を重ね読み続けられるモノにこそ不変の価値感があり、それしか
頼れないと思うからだ。

ただし、今年のベスト10に一冊もビジネス書が選ばれないというのも、
明らかに偏りがあると言えるだろう。来年はもうちょっと意識して
ビジネス書を読んでみようか・・・。

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写真は上から フラゴナールの「読書する娘」

私の今年のベスト10冊

映画 "You've Got Mail" の1シーン。
ニューヨークの老舗と新興チェーン書店の争いと、お互いの身分を知らず
恋に落ちた両社の経営者の物語。
メグ・ライアンとトム・ハンクス主演、1998年作品。
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by Mikio_Motegi | 2010-10-30 21:15 | ブレイク