ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

「昭和天皇独白録」

今年は昭和天皇の生誕110周年で、関連書を並べ特設コーナーを置く
書店も多い。
世間であまり大きな話題になっていないのは残念だが、東日本大震災の
影響もあったのでやむを得ないだろう。

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早速「昭和天皇独白録」(文春文庫 495円+)を購入。
昭和天皇自らが語る張作霖爆死事件から終戦までの経緯、要人の人物評、
日米交渉の裏側、御前会議のエピソードが満載で、あっというまに
読了してしまった。

特に平沼騏一郎首相、宇垣一成外相、松岡洋右外相をぼろくそにけなし、
反面東条英機や河本大作(張作霖爆殺事件の首謀者)に一定の評価を
与えている点など、独自の視点が感じられる。
けなされた人の遺族がどんな思いがするだろうかと、余計な心配を
してしまうほど赤裸々な人物評だ。

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改めて驚くのは、戦前の昭和天皇は「統帥権」という権力を持ち現実の
政策に相当関与しており、戦後の「象徴」扱いとはかけ離れている点だ。

私は、GHQの戦略で昭和天皇が戦争裁判にかけられず、そのおかげで戦後の
日本人の気持ちが昭和天皇を中心に一つになり、奇跡の復興を遂げたという
事実に反発するつもりはない。
言うまでもなく私のような世代は、戦後の経済復興の恩恵を一身に浴びて
育ったようなものだからだ。

また多くの保守派の人々と同様、昭和天皇に親しみを抱いている点を
否定はしない。

かつて私は高校生の時に一度だけ天皇・皇后両陛下の姿を遠くから拝謁した
経験がある。
当時の国鉄高崎駅構内で、巡行の途中、御料車の乗った両陛下が立ったまま
群衆の静かな歓声に応えていた。
ご高齢であったにもかかわらず、微動だにせず正面を見据える姿に「国父」
としての威厳を感じたものだった。

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だが、戦後同じ枢軸国でもドイツ人民がナチスを追放し、イタリアが
ムッソリーニを裁いた事で完全に過去の独裁体制を清算したという
歴史がある。

それとは対象的に、日本が自らの手で戦争責任者を裁く機会を失った事実が、
現在の日本人にどのような影響をもたらしているか、思いを巡らせる必要が
あるだろう。
つまりいつまでも自立せず、政治・経済・軍備などにおいて未だに
戦勝国アメリカの意向に左右されるという日本の現状。

かつて三島由紀夫の「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、
からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、
或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう」という言葉が現実に
ならないように、日本人と天皇の関わりあいについて考え直す時が
来たのでは、という思いを強くした。

迷走を繰り返す現政権と、頼りにならず対立軸ともなれない野党に対し、
今上天皇に一喝して頂きたいと言ったら、時代錯誤と笑われるだろうが。

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写真一番下は、昭和天皇の独白を聞き書きした外交官寺崎英成と
妻のグエン、そして一人娘のマリコ。
彼女は柳田邦夫の大ベストセラーでNHKでドラマ化された「マリコ」の
主人公でもある。
「マリコ」についてはまた別の機会にアップさせて頂くが、涙必至の感動の
ドキュメンタリーである。
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by Mikio_Motegi | 2011-07-03 17:17 | ブレイク