ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

ミシェラン日本初上陸

レストランガイドで名高いミシェラン東京版が出版された。
国内のレストラン業界ではこの話題で持ちきりで、「B級グルメ」を自称して
いる私も早速購入に走った。

内容についてはマスコミで喧伝されている通り。だが私としてはハッキリ
言って物足りない印象が残る。
「味覚」という個人の嗜好で評価するレストランガイドにしては、
いささかコメントが平板で常識的。
また眺めの良いレストランを高く評価する傾向があるが、本来眺望と
レストランの実力は別の筈である。もし今年3つ星に輝いたレストランの
目の前に、来年高層ビルが建って眺望が妨げられれば、星は減るの
だろうか?という疑問が残る。

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20数年前、「グルマン」という東京、大阪、神戸のフレンチを取材し格付け
したグルメ本が毎年出版されていたことを記憶している人も多いだろう。
料理評論家の山本益弘と見田盛夫の共著で、彼らはたとえ有名で高価な
グランメゾンでも、味やサービスに手抜きがあったらそれこそ徹底的に
こき下ろす。一方で無名で廉価な街のビストロでも、一つでも光る所が
あればそれを褒め称えていた。
「グルマン」によって引き立てられ名を挙げたレストランは、西麻布の
ビストロ・ド・ラ・シテやひらまつ亭、プティ・ポワン、銀座のぺリニヨン、
大阪・心斎橋のヴァンサンク等、枚挙の暇が無い。

酷評された方の代表が銀座のマキシムや四谷のミクニで、徹底的に
こき下ろされたこれらのシェフが怒りのコメントをどこかのメディアで語って
いたことを思い出す。
また当時映画監督として飛ぶ鳥を落とす勢いの故伊丹十三が、「3代続いて
家付きのお抱え料理人のいる家庭でも育った人間でもなければ、
料理批評などおこがましくてするもんじゃない」と言って「グルマン」を批判し、
それに対する世論の反論等で社会現象になったものだ。

「グルマン」の評価の特徴は、「眺望」「キャンドルの光」「BGM」を批判した
ことにもあった。これらは料理を味わう上で基本的に邪魔な要素であり、
落ち着いたインテリア、的確なライティング、お客達の密やかなさざめき、
そしてキャトラリーの僅かに触れ合う音こそが食を引き立てる舞台装置で
ある、と評していた。この評価基準は私は今でも正しいと思う。

「グルマン」は権威と化し、胡坐をかいてゲストを見下すような高名・高価な
レストランを糾弾し、名も無いビストロを褒め称える事でフレンチをより
親しみやすく、その魅力を喧伝する役割を担っていた。
思えば1億総グルメ時代の先導者のようなメディアだった、と言えるのでは
ないだろうか。

かくいう私も独身時代、毎月給料日に「グルマン」を片手に握り締め、当時
付き合っていた女性と都内の1つ星ビストロを全制覇しようと食べ歩いた。
そして年2回のボーナス時はそれこそ2つ星、時には3つ星のグランメゾン
に挑戦したものである。バブルの時代だったなあ・・・。

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ミシェラン東京版では、私が嘗て勤務した東京・芝パークホテルの
「タテルヨシノ」、姉妹ホテルであるパークホテル東京の「ガストロノミー
フランセーズ タテルヨシノ」及び「花山椒」となんと3店舗がそれぞれ
1つ星に輝いた。
偶然ミシェランの発売日に私の同期生である柳瀬連太郎社長に
タテルヨシノでフレンチをご馳走になったのだが、彼も嬉しそうだった。
聞けばこの3店舗はたちまち年内は予約で一杯になったようだ。

もっともこの現象が芝パークのような少数の固定客に愛され支持されて
来たようなホテルにとって、どこまで喜ばしい事かどうか、私には
わからない。柳瀬社長も多分そう思っているのではないだろうか。

ミシェラン旋風はまだまだ吹き荒れている。今年星を逃した有名店が
来年どう巻き返すかも楽しみだ。
ただ少なくとも、自分が好んで愛用していたビストロに誰かを招待した時、
「なんだあ、ミシェランで星取ってない店?」と言われ見下される事の無い
よう願いたいものだ。

写真下はオアゾ丸善前でのミシェラン東京版発売記念イベント。
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by Mikio_Motegi | 2007-11-27 14:36 | ブレイク