ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

平城京遷都1300年イベントによせて

先日、所用で奈良に行ってきた。京都駅から近鉄特急電車で僅か30分、
京都市内から車で1時間の至近距離にありながら、こちらに移り住んで
はじめての奈良、前回訪れたのが高校の修学旅行の時だったから、何と
30年ぶりの奈良である。

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2010年、奈良県は「平城京遷都1300年」を記念しての大イベントを計画して
いる。 
それによるとイベントは1年間を通じ延べ1200-1300万人の来場者を予定
している。事業規模は100億円。壮大なイベントだ。*①

でもなんだか昨年の滋賀県彦根市の「国宝・彦根城築城400年記念
イベント」の2番煎じのような気配。
頭に鹿の角が生えた坊さんのキャラクターを作ったりして、彦根城の
「ひこにゃん」を意識しているところが見え見え。
この「坊さんの子供(童子)に鹿の角を生やした」キャラクター、賛否が喧しい
のは周知の事実。

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私もなんだか気持ち悪く感じるが、それを論ずるのは今回の主題ではない。
ここで私が言いたいのは、せっかくのイベントなのにそれを迎えるだけの
奈良の観光・宿泊施設の質と量が不足している点である。

例えばホテル・旅館の数。
国交省が制定する「政府登録国際観光ホテル・旅館」で奈良県にある旅館
は24軒、ホテルは6軒。
他県と比較すると、京都は旅館が70軒・ホテルが28軒、大阪は旅館が8軒
・ホテルが37軒、滋賀県でも旅館14軒・ホテルが18軒ある。
日本全国で3000軒が登録されているというから、奈良のそれは1%に
過ぎない数字だ。*②
実は奈良県は、「観光客が泊まらず素通りする県」として有名なのだそうだ。
様々な要因はあろうが、宿泊施設の量自体が少ないのは大きな理由の一つ
であることに間違いは無い。

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質についてホテル予約検索サイト「一休」と「楽天トラベル」で調べても
「高級」といえるカテゴリーに属するのは「竹林院群芳園」、「月日亭」
の両旅館と奈良ホテルくらい。
ホテル日航奈良はとても5スターとはいえないレベル。
つまり質・量共に足りないのが現状なのだ。

もう一つの質の問題はホスピタリティだ。
日本で最大の世界遺産登録数を誇る当地ではあるが、「食」について文化が
定着していない。
例えば「奈良に行けば必ず食べたくなる」名物料理、「奈良のあそこの料理が
食べたい」という有名料亭・レストランが見当たらない。
私でも思いつくのは「柿の葉すし」と「三輪そうめん」、「吉野の葛」くらい。
1000万人規模のイベントを開催するに相応しい施設・ホスピタリティとは
到底思えない。

ホテルについては、奈良駅前の一等地に「コートヤード・バイ・マリオット」が
2010年4月に完成するのだそうだ。オーナーは(株)ゼファー。客室数297、
31㎡のツインルームが中心の宿泊特化型ホテルである。
奈良県のホームページにいくつかのコンペ案の中でマリオットに決まった
理由が10項目ほど列挙されているが、面白かったのはその6番目。

それによると:
「(このホテルは)宿泊特化型であり、市内の既存レストランや宿泊施設と
競合する可能性が少ない」・・・のだそうだ。
ここは嘘でもいいから「奈良で初の外資ホテル参入で、既存店舗と競争し
奈良観光業の活性化を計る」とか記して欲しかった。
とにかくこの理由、あまりに正直といえば正直、あまりの排他性・進取の気性
の無さに呆れるばかりだ。 *③

このホテルの運営がマネジメント方式かフランチャイズか、はたまたリースか
は不明だが、「競合しないから選んだ」とまでされて、マリオットさん、
ここは奮起しないと男じゃないよ、と言いたくなる。

宿泊施設の数はこれから建設しても間に合わない。だが「食」のラインアップ、
ホスピタリティはまだ間に合う。
もちろん「官」主導のホスピタリティなんてありえないので、ここはひとつ奈良
の地場のホテル・レストラン、料亭の頑張りに期待したい。

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しかし東大寺の大仏は溜息が出るほど美しいし、大仏殿の壮麗、
南大門の運慶の金剛力士像の気迫、二月堂の佇まい等、奈良は芸術作品
の宝庫だ。
今回は寄れなかったが法隆寺、薬師寺、興福寺もある。「女人高野」の室生寺
や柳生街道も見逃せない。
今回の一大イベントでこうした世界に通用する奈良の魅力が改めて発信される
ことを望む。

*① http://www.1300.jp/
*② http://hotel.nihon-kanko.or
*③ http://www.city.nara.nara.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1183443684047&SiteID=0000000000000&FP=toppage

写真は上から東大寺金堂、話題のマスコットキャラクター、二月堂の
「お水取り」で燃やされる松明(たいまつ)、そして東大寺境内の喧騒。
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by Mikio_Motegi | 2008-03-10 22:48 | 京都・紀行