ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

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リア王

シェイクスピア東日本大震災のような大災害見舞われ、何を信じていいか
わからなくなり、価値観がひっくり返ってしまうと、私のような凡人が
頼れるよすがになるのは「古典」でしかない。

「愚者は経験に頼り、賢者は歴史に学ぶ」と言うし。
かくして30年以上も前に読んだ「リア王」(シェイクスピア作 野島秀勝訳
ワイド版岩波文庫)を再購入、再読した。

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「リア王」はシェイクスピアの四大悲劇の中でも最も壮大なスケールで、且つ
残酷な物語だ。
あらすじは、三人の娘の愛情を試そうとした老王リアは、末娘コーディリア
の真心を信ぜず、不実な長女と次女の甘言を信じ、結局裏切られる。
狂乱の姿で世を呪い、嵐の荒野をさまよい、疲れ果てた父とコーディリアとの
美しい再会も束の間、悲惨な結末が待っている、というもの。

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読んでいて気がつくのが、シェイクスピアというと何となく高尚な、
インテリ向けの作品のようなイメージがあるが、実際は違って猥雑な
セリフも数多い。

例えば:
「自然よ、あんたこそ、おれの女神だ。あんたの掟にだけは従う。
(中略)(妾腹の自分が)下賤だって?いや俺たちこそ人目を忍ぶ欲情が
造った自然の産物。それだけたっぷり、心身の養分と激しい活力を親から
授かっているのだ。
退屈、陳腐、飽き果てた寝床の中で、夢かうつつか、あくび混じりの間に
出来た世のアホどもとはどだい訳が違う」(1幕第2場)

「運が向かなくなると、いや、大抵は自業自得にすぎないのに、禍いを
太陽や月や星の自然のせいにする。悪党になるのは天然自然の必然、
アホのなるのは月の影響、ごろつき、盗っ人、裏切り者になるのは
生まれた時の支配星の運勢、といった塩梅だ。(中略)
てめえの助兵衛根性を星のせいにするとは、なんて見事な女郎買いの
言い逃れか!」  (1幕第2場)

「正直者は犬ころ同然、鞭をくらって追い出され小屋に引っ込むのが
定め。口先達者なやんごとなき“牝犬さま”は炉辺でぬくぬく、
臭いおならをひり遊ばしているというのに」 (第1幕第4場)

「親父がぼろ着りゃ子供はそっぽ向き、親父金もちゃ子供は孝行。
運の女神は根っからの女郎、銭の無いのには戸は明けぬ」(第2幕第4場)

「いや、もっと落ちるかもしれない。これがどん底だなどと言っていられる
間は、どん底になっていないのだ」 (第4幕第1場)

・・・もってまわった修辞語などなく、読む者の胸元にズバッと切れ込む
辛辣な言葉の数々。これらこそが大衆劇作家シェイクスピアの人気の
真骨頂なのだと気づかされる。

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思えば、人間の歴史は数々の苦難の連続だった。今そこにある苦難も、
昔からの人間の営みの延長線上にあると思えば、少しは慰みになる。
古典を読む、歴史を学ぶことは何も知識を増やす結果になるばかりではない。
私達の目の前に横たわる苦難を乗り越える勇気を与えてくれる効能がある、
と言えるだろう。

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写真は全てイメージ。アンソニー・ホプキンスの主演でナオミ・ワッツ、
グィネス・パルトロウ、キーラ・ナイトレイが三姉妹を演じる予定だった
「キング・リア」という大作映画は、残念ながら製作が中断したままのようだ。

ちなみに、小説はともかく「戯曲」を読むのは苦手という人も多いだろう。
が、読み慣れてしまえば簡単だ。むしろ日常使うセリフのやりとりの行間
から舞台での情景を想像でき、あっという間に読涼できてしまう。
是非試してみて欲しい。
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by Mikio_Motegi | 2011-04-23 19:56 | ブレイク
昨日は次女の十三(じゅうさん)参り。この儀式については
2009年3月31日のブログに記したので、ここでは詳細は省く。

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嵐山の桜も半分が散った昨日の土曜日だが、人通りは例年の8割ほどか。
その原因は言うまでもなく東日本大震災と福島原子力発電所の放射能漏洩
問題、それに起因した世の中の自粛モードだ。
だが我が家はそんなモードは無視、予定通り盛大にお祝いを敢行した。

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次女と同い年の従姉と一緒に参拝し、夜は室町の「京夕け善哉(よきかな)」
で、群馬からやって来た私の実母と実兄を含め総勢16名で夕餉を囲む。
さすがミシェラン一つ星の実力店だけあって、出汁(だし)の取り方が
絶妙だった。美しい女将と仲居さんのホスピタリティも満点で、楽しい
ひと時だった。

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翌日の昼は「祇園おくむら」にて会席風イタリア料理。
多種類の料理を少しずつ楽しめる、老齢の母親にはぴったりのコースだ。
祇園の切通しの喧騒がウソのようなインテリア、祇園新橋や
花見小路も近く、食後の散策にもってこいのロケーションだ。

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宴の最中も、片時も東日本大震災が頭から離れることは無い。
だが自分で稼いだお金で、家族のお祝いをするのに遠慮する気はさらさら
ない私だ。

むしろ、「(その時点で)できる人が、できない人の分まで頑張る」のは
チームワークの基本である。
被災した人々、復旧に当たる関係者、ボランティアの労苦を思いつつ、
次世代の日本を担うであろう次女の為に杯を重ねさせて頂いた。

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写真上2枚は嵐山法輪寺(ほうりんじ)にて。

京夕け「善哉(よきかな)」のエントランス。祇園の名店で修業した
板前さんと仲居さんが結婚し、3年前に店を開いた。

「祇園おくむら」。コース料理のみ。最後の一口カレーライスが名物。

従姉一家を撮影する家内と次女。

渡月橋を歩く次女。授かった智恵を落とさないよう、一心不乱で渡り切った。

法輪寺の境内に「電電宮」という電気・電波の神様を祀った神社を発見。
東京電力の関係者はここに参拝すべきだ。
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by Mikio_Motegi | 2011-04-17 21:22 | 京都・紀行
4月6日の水曜日、ACCJ(American Chamber & Commerce Japan)
主催のランチョンセミナー"Radiation and Risk"に参加してきた。
場所は新装なった麻布狸穴の東京アメリカンクラブ。

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パネリストは以下の4名。(難解なので和訳不可能。でも何となく
どういう人たちかわかるでしょう?)

Speakers:
- Dr. C. Norman Coleman, Associate Director,
Radiation Research Program, Division of Cancer Treatment
and Diagnosis, National Cancer Institute,
U.S. National Institutes of Health

- Jana Telfer, Associate Director for Communication Science,
National Center for Environmental Health/Agency for
Toxic Substances and Disease Registry, Centers for
Disease Control and Prevention.

- Steve Simon, Ph.D, Division of Cancer Epidemiology and
Genetics, National Cancer Institute

- Michael Noska, Ph.D. Environment, Safety and Strategic
Initiatives, FDA (U.S.Food & Drug Administation)

12時からの昼食の後、12時半頃からはじまったプレゼンテーション。
Q&Aセッションでは14時までの予定を15分延長するなど、熱心な討議が
続いた。

参加者は250名。通常のACCJのランチョン・セミナーではせいぜい
80-100名程度しか出席が無いので、今回は異例だ。
また見渡したところ、日本人は20-30名程度、後は全て欧米人だ。
彼らの関心の高さが伺える。

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セミナーでは"ALARA"という言葉が新鮮だった。ALARAとは
As Low As Reasonably Achievable の頭文字で、直訳すると
「合理的に出来る限り低く達成できる」被爆数値という意味だ。

すべての被爆は社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能
な限り低く抑えるべきである」という基本精神に則り、被爆線量を
制限することを意味している。
(原子力安全委員会/www.nisa.go.jp/word/42/1029.html)

またリスクに関しては、Risk=Hazard + Outrageであり、
物事には常に危険因子があるが、そのままではリスクではない。
それはHazardだ。
例えば車の運転、山登り、食品に含まれる微量の細菌等はHazard。

ところがそれがOutrage(侵される、点火される)されると、交通事故、
遭難、食中毒等の事故が起きる。
原発についても、HazardではあるがOutrage(今回の場合は地震と津波)
が無ければ安全だった。よって原発は全てリスキーだ、という考え方は
あたらない、とする物だった。

また世界史上唯一の被爆国である日本の放射線研究は世界で最も信頼度の
高いものなので、風評に惑わされることなく落ち着いて対処して欲しいとも
語っていた。Atomic Bomb(原子爆弾)をそのまま言わず" A-Bomb"と
いう言い回しにしていたのが印象的だった。

アメリカ・オバマ政権の唱える原発開発促進を否定しかねない発言は
無かった。パネリスト4名とも、「日本政府と関係機関は未曾有の惨事の
中で良くやっている。当面は安心して見守ろう」という姿勢だ。

ま、ACCJの立脚点からいえば、反原発は絶対に表明しないだろうし、そんな
人物をパネリストとして呼びやしまい。

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セミナーは淡々と進み、興奮する人も激昂する人もおらず、時々ジョークが
交るいつもの雰囲気。
察するに、東京に踏みとどまっている欧米人は、踏みとどまれる理由を
必死に探している、という感がした。

今回同じテーブルに同席した元ヨコハマインターコンチ勤務のMarthinは
オーストラリア人で現在欧米のロジスティック会社の日本代表。
左隣の人物は米系ソフトウェア会社の社長で滞日14年。
彼らは共に日本が大好きで、奥さんは日本人。子供もいる。
そんな彼らに奥さんの親戚を残して自分達だけ本国に帰国するという
選択肢は、無い。

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世界中が固唾をのんで見守っている福島第一原発の趨勢。
欧米各国は、福島と東京との距離、位置関係など念頭にない。
日本全土が放射線で被曝し、キノコ雲の覆われていると本気で信じ込んでいる
人々があまりにも多い。

そんな本国からの「大丈夫か?メール」「帰れ!コール」にめげず、大好きな
日本に踏みとどまっている彼ら。

そんな彼らの為にも、頑張れニッポン!と改めて声を大にしてエールを
送りたい。

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写真は上から東京アメリカンクラブの入り口。
ランチはミネストローネ、サーモンのグリル、デザート・コーヒーだったが、
どれもめちゃくちゃ美味しかった。

会場風景。

リスクマネージメントのイメージ。(本文とは関係ありません)

それぞれイメージ。
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by Mikio_Motegi | 2011-04-10 22:25 | Japan Revitalization

復興を支えるもの

2001年の911の後、当時のニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニは
市民に向かい「ミュージカルに行こう、映画を観よう。大人気の
『ザ・プロデューサーズ』だって今ならチケットが手に入るぞ」と、
未曾有の大惨事に意気消沈する人々を鼓舞したという。

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テロに遭ったからといって意気消沈していたのでは経済は回復しない。
むしろそれこそテロリストたちの思うつぼなのだ。
そんなジュリアーニの言葉に市民はどんなに勇気づけられた事だろうか。
実際メジャーベースボールは10日後に再会。ジュリアーニ自らメッツの
試合に足を運んだという。

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3月29日(火)のサッカー日本代表対Jリーグ選抜の試合は見応えがあった。
タイトルのかかっていない試合で、日本代表がここまでパフォーマンスを
魅せるのは、日韓戦以外滅多にない事だ。
もちろん震災の被災者のみならず、日本そのものを鼓舞しようという強烈な
使命感はあっただろう。が、同時に新旧の代表対決の様を呈したメンバー構成
も、彼らのモチベーションをぎりぎりまで上げてくれたに違いない。

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「ここぞ」という時にゴールを挙げたキング・カズは凄い。
私は今回彼の活躍など全く期待していなかったのだが、短時間のプレー、
満員の大観衆、日本中が注視する試合という好条件が揃い、彼の
「お祭り男」ぶりがいかんなく発揮された。
ほんと、あの一発以外にカズはピッチでうろうろしているだけだったのに。

また闘莉王のアシストも見逃せない。GK川口からのロング・フィードを
岩政大樹に競り勝ち、カズにつなげた闘志あふれるヘディングだった。

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スポーツの世界がこれだけ団結し復興を訴えているのに、どうもこの国を
覆う「自粛ムード」が晴れない。

今回の大災害では発電施設が被災した為、節電を強いられているという
事情はある。避難所生活で窮乏している同胞に毎日メディア通し接して、
心を痛めない人はいない。

だが、昼間にできるイベントだってあるし、酒を飲まなくても盛り上げられる
パーティーだってある筈だ。
こういう時こそ、ジュリアーニのようなリーダーがいて、国民を盛り上げて
鼓舞すべき時なのに、現政権にその気概も意思も無いようだ。

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外国からの「頑張ろう!」「日本は素晴らしい!」という称賛は、当初は
聞いていて嬉しかったし、鼓舞されもした。
が、現政権のあまりにも情けない、ふがいない震災対策に、称賛されると
却って恐縮してしまう気持ちが芽生えてきた。

いくら外国人が称賛してくれても、肝心の首相がこの体たらくだし、まして
圧倒的多数で民主党政権を選択したのはつい1年前の我々自身だった。

とにかく反省・検証・批判・非難をしている場合ではない。一番大事なのは
この国の展望を指し示す事である。


写真は上からジュリアーニ前ニューヨーク市長。
このエピソードはブログ「ウォールストリート日記/
http://wallstny.exblog.jp/ 」より。

ミュージカル「ザ・プロデューサーズ」(これは2005年版)。

サッカー日本代表対Jリーグ選抜。

キング・カズ。これほどの選手がワールドカップ出場経験がないというのも
改めて驚かされる。

サンケイ・ニュースより。京都御所で拝観を規制したら日本の復興に
繋がると本気で信じている「木っ端役人」がここにもいる。
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by Mikio_Motegi | 2011-04-03 11:11 | Japan Revitalization