「ブロードウェイの天使」
2009年 04月 26日
という短編集を見つけた。(ディモン・ラニアン作 加島祥造訳)
新潮文庫1988年の第4版で定価360円のところ、この書店では
1000円の高値がついている。
若い店主に理由を聞くと、この本は既に絶版になっており、加えて
ミュージカル「ガイズ・アンド・ドールズ」の原作本として斯界では人気
が高いそうだ。
「ガイズ・アンド・ドールズ」”Guys & Dolls”は「ブロードウェイの
天使」に納められている「ミス・サラ・ブラウンのロマンス」と「血圧」
という短編をベースにして脚色されたラブ・コメディ。
禁酒法時代のニューヨークでブロードウェイにたむろする賭博師たち
と、キャバレーのショー・ガール、救世軍のお堅い女性という2組の
カップルが中心で物語が繰り広げられる。
1950年にブロードウェイで初演され爆発的にヒットし、4年間
計1200回もロングラン上演された作品だ。
トニー賞の各部門を総なめし、1992年のリバイバル版では
「ベスト・リバイバル賞」を受賞している。
現在でもブロードウェイでも指折りの、いかにもアメリカらしい屈託
の無いどたばたコメディ作品として人気が高い。
1955年の映画版ではマーロン・ブランドが主演した。
日本でも宝塚歌劇団が1993年に大地真央主演で上演、大人気を
呼んだ。
実は私も15年前にNYCのブロードウェイでこのリバイバル版を観劇
した、思い出の作品でもある。
もっとも現地で急に思いついて、宿泊していたインターコンチの
コンシェルジュに無理やり頼んでチケットを確保してもらったので、
何の予備知識も無いまま観劇してしまった。
よってあらすじはともかく、時代背景やセリフの細かいニュアンスなどが
分からなかったので、今ひとつ消化不良だった記憶がある。
ただ主役ショーガールを演じる女優の圧倒的な声量とソプラノの
美しさ、キャバレーでのシーンやアンサンブルによるダンスは圧巻で、
今でも強烈な印象に残っている。
この本のタイトルにもなっている「ブロードウェイの天使」は、いつもは
金に貪欲なノミ屋の「ベソ公」が、ひょんなことから4才にもならない
天使のような娘「マーキー」を養育することになり、父親代理として
人間的に成長していく物語。
マーキーはブロードウェイの賭博師やギャング、売れない俳優から
「天使」と名づけられるほど愛されるが、やがて悲劇がマーキーと
「ベソ公」を襲う・・・というお話。
他にも酔っ払いのウィルバーが気ままな黒猫に翻弄される「リリアン」、
傷ついた殺し屋と、これも片目を失ったのら猫の復讐劇
「片目のジャニー」等佳品ぞろい。
加島祥造の翻訳はニューヨークのスラングを、テンポの良い
べらんめい調言葉に置き換えており、よくこなれていて読みやすい。
同氏は雑誌「サライ」の本年4月15日号からコラムを書いているので、
興味のある方はどうぞ。
写真は上から同文庫本。繰り返すが絶版なので普通の書店での入手
は困難だ。
中は"Guys & ・・・"のHPより。本年3月からブロードウェイで
再リバイバルされている。
下はタイムズ・スクエアの風景。www.davidmacd.com より。