消費気分調査とレベニュー・マネジメント
2009年 05月 17日
その席でビュッフェ形式の料理とワインを堪能させてもらった
「一宿一飯の恩義」があるので、ここではホテル名は公表しない。
が、総支配人がスピーチで述べた「当ホテルは高品位・多機能、そして
低価格を約束します」という言葉に、大いに異議を呈したい。

「最近のホテルはゴールデンウィーク、お盆、クリスマス、お正月等の
繁忙期とそうでない時期の料金格差が大きすぎます。
普段1万円で泊まれるホテルが繁忙期だからといって料金が跳ね上がり、
1万5千円になれば、お客様は不満に思うに違いありません。
そこで当ホテルは高品位・多機能、そして低価格を標榜し、1年を通して
変わらない宿泊料金を提供します」
・・・このスピーチを聞いて私が危うくワインを吹きだしそうになったのは、
このブログの読者である皆さんもおわかりであろう。
料金設定に季節波動がない?高品位・多機能という素晴らしいホテルなのに
低価格?高い料金を払ったお客は不満足?
「突っ込みどころ」満載のスピーチである。
私はてっきりパーティ会場でのリップサービスかと疑い、その後歓談中に
総支配人氏に直接スピーチの真意を伺った。
が、帰ってきた答えは一緒。呆然となる。
尚彼は東証一部上場の親会社からの天下り組だということもわかった。

今年3月に電通総研が行った「消費気分調査レポート」で面白い分析が
されている。
インターネットによる調査で学生を除く20-60才の1000人が対象。
それによると、金融危機後95%が何らかの節約を意識するようになった。
が、「日頃の節約を気にせず、ちょっとした贅沢なお金の使い方をした」という
答えが70%に上った。
そのお金の使いみちは「旅行」「食事」が殆どであったという。
そして「消費者は多角的な情報を収集し、冷静を保ちつつ、積極的な
気分転換の為の消費行動を行っている」と分析している。
(www.dentsu.co.jp 或いは「電通総研・消費気分調査」で検索)
消費者は、節約をしている最中でも財布の紐を緩め、気分転換をする
機会を待っているのだ。それをホテル業でなくて、誰が提供すると
いうのだろう?
件の総支配人氏は世の中の消費気分を全く無視していると言える。
寧ろ、何でも値段が安ければお客は満足するという、大変な思い違いを
しているのだ。
GWやクリスマス。折角の消費気分が盛り上がるシーズンにも拘らず、
閑散期と同じ料金を貫くという政策。
いったいこのホテルはいつ儲けようとするのだろう?
そして利潤を追求しないホテルで働く従業員、納入業者等のステーク・
ホルダーの満足度をどう慮(おもんばか)るつもりなのだろう。
他業種の事は言及しない。だがホテル、宴会場、航空機、貸し倉庫と
いった限られた箱を売っていく商売に、「レベニュー(イールド)・マネジメント」
(RM)の思想は不可欠だ。最近ではゴルフ場にもこの考えは浸透しつつある。
RMとはひと言で表すと需要と供給をシステマティックに管理する事。
しかし国内系ホテルで本格的にRMに取り組んでいるホテルは、
残念ながら数えるほど。
取り組んでいないホテルは親会社の庇護の下、シロウト的な運営しか
していないケースが殆どだ。
言い換えれば親会社がホテル経営に性根を入れていない。
性根を入れたホテル経営とは、ホテル運営本業でのGOPが損益分岐点に
ヒットし上回るかどうかに尽きる。

・・・今回のブログを書くにあたって、件(くだん)のホテルに先日家族で
のこのこ出かけ、食事をしてきた。「顧客招待会でさんざタダ飯・タダ酒を
食らっておいて、ブログで悪口を書くのか」と言われたくないからである。
食事はクラシカルな味付けでそこそこ美味しかったし、得にデザートは
秀逸だったことを付け加えておく。
写真は上からマイクロス・フィデリオ社のHPより。
中は件のホテルのパーティ会場。
下はイメージ写真。

