ロバート・B・パーカーの訃報によせて
2010年 01月 24日
享年77歳。
1973年の「ゴッドウルフの行方」からはじまった私立探偵「スペンサー」
シリーズは、昨年の「ザ・プロフェッショナル」まであしかけ36年間で
37作品が刊行されている、大ベストセラー作家だ。

私は80年代の半ば、25歳の頃にスペンサーに出会い、暫くは完全に
「はまって」しまった経験がある。
それまで刊行されたシリーズを次々と読破し、新刊本が出ると、いや
ハードカバーは値段が張るので、文庫化されると飛びつくように買い求め、
貪り読んだものだ。
その20冊近くのコレクションは、残念なことにペナンから京都の家内の
実家に転がり込む事になった時、他の本も含めペナン在住の日本人向けの
ガレージセールで売り払ってしまった。
ただし「初秋」だけは手元に残してある。これは私が最初に経験した
スペンサーで、且つ最も愛着のある白眉の一冊だ。
読者人気投票でも常に1位にランクされる、特に愛読者の多い本として
名高い。

内容はこうだ。・・・思春期を迎えたポールは、いがみ合う両親の元で
育てられた為、ひ弱で自立心が無く、全てに無気力でだらしない。
スペンサーはそんなポールをひと夏に間に「男」として鍛え上げるべく、
二人で湖畔のログハウス作りに取りかかる。
すぐに疲れ、反抗し、ふて腐れるポール。何を質問しても肩をすくめ
答えないポールに「今度俺の前で両肩をすくめるマネをしたら、ここから
叩き出す」と宣告する。
「料理は女がやるものではないの?」という質問に、「半分正しい。
女もやるし男もやる」等々、ウィットと深い人生観に裏打ちされたセリフが
にくい。
夏が過ぎ、初秋を迎える頃、ついにログハウスが完成する。
シャンパンで乾杯する二人。
日焼けして見違えるほど身体も大きくなったポール。
毎日コツコツと続ける事、やり遂げることの素晴らしさを身をもって
体験し、やがて両親から離れてポールは自立の道を歩むことになる。
一方でお約束の、ポールを取り戻そうとする父親の雇った用心棒との
派手な立ち回り、「スペンサーの料理」という単行本も出たほどの凝った
料理等、楽しませてくれる要素もふんだんに盛り込まれている。
ある評論家が、「思春期の子供を持つ親のバイブルのような本」と言って
いたようだが、正にその通りだ。

元ヘビー級のボクサーで、朝鮮戦争に従軍した経験があるタフガイ。
ジョギングとウェイト・トレーニングを欠かさず、脇の下に吊るした
リボルバーの膨らみでジャケットのシルエットが崩れるのを気にする
洒落者。
ビールと白ワイン(辛口のシャルドネ!)とウィスキーを愛し、週末は
ガール・フレンドのスーザンの為にプロ級の料理の腕を振るう。
そんなスペンサーに「男の理想像」を見出す人も多かったろう。
事実私も心の中の澱(おり)のように、今でも無意識のうちにスペンサーの
ライフスタイルを追い求める事がある。
おりしもスペンサー・シリーズを再読しようかなと思っていた矢先でもある。
週末は書棚にたった一冊残っている「初秋」を取り出して、パーカーを
偲ぶとしよう。

写真は上からパーカー。
「初秋」ハヤカワ・ミステリー文庫刊。故・菊池光の翻訳が素晴らしい。
アメリカでテレビシリーズ化されたスペンサー。左は相棒のホーク。
このホークという男が、時としてスペンサー以上にかっこいいのだ。
だがこのスペンサー役の俳優は、スペンサーのイメージとまるで違うという
読者・視聴者の意見が圧倒的だったようだ。
スペンサーの人物像は、パーカー本人の姿が色濃く反映されている。
よってパーカーに風貌が似ている「スタン・ハンセン」に演じて欲しかった。
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