ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

ジャカルタの犬事情

我が家で犬を飼い始めて思い出したのが、ジャカルタで経験した
犬に関する諸事情である。

その1)

ジャカルタで私と家内は、「シンプルック」という高級住宅地の
コンドミニアムの一室を勤務先のシャングリ・ラホテルから提供されて
いた。

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ジャカルタに来て最初の週末、ジョギングが趣味の私は、濃いガジュマルの
並木が続き、車も人通りも少ない住宅地周辺を早速走ったが、途中で
散歩中の欧米人夫妻に呼び止められた。

「ハーイ、いい天気だね。ジョギングが趣味なの?」
「はい、日本から来たばかりなので、今日初めて走るのです。ここらは
静かで走りやすいですね」
「うーん、でも気をつけた方がいいよ。ここらにいる野犬はmad dog
だからね。じゃ元気で、バーイ」
「・・・mad dog?「狂犬病」??」

日本では狂犬病なんて、マンガや映画の世界の話だと思っていた。
が、調べてみると、発展途上国では結構の数の人が命を落としている
とのこと。
以来ジャカルタにいた1年半の間、趣味のジョギングは完全に封印された
のである。

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その2)

ある日いつものようにホテルの車で帰宅途中、後部シートに座っていた私は
家の近くの路上で「グニャッ」という衝撃を感じた。
スピード防止のバンプを越えたのとは違う、何か柔らかいものを踏んだような
妙な感触なので訝っていると、運転手が何やら嬉しそうにして車外に出る。

「トアン(旦那)、犬を轢きました。多分野良犬です」
「あっそ、じゃほっといたら?」
「トアン、持って帰りますか?」
「・・・轢いた犬を?なんで?」
「私が頂いていいですか?」
どうも話がかみ合わない。

「いいけど、どうするの?」
「オラン・チナ(中国人)が犬肉を食べるので、高く買ってくれるんです。
この犬、私が頂いてもいいですか?トアン、犬肉食べますか?」
「・・・いらない。持って帰っていいよ」

運転手は嬉々としてぼろきれに犬の死体を包み、トランクに放り込むと、
何事もなかったかのように私を送り届け、そしてそそくさとどこかへ車を
走らせジャカルタの闇に消えた。

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その3)

親しくなった某日系企業の重役が、一時帰国した際に日本で飼っていた
御自慢のゴールデン・レトリーバー2頭を赴任先のジャカルタに
連れてきた。
2頭は親子で、血統書つきの大変立派なものだ。

ある日彼から連絡があり、日本から持参したドッグ・フードが底をついたので、
今度の週末にデパートに買いに行くから付き合って、という。
そこで日曜日に、地元の金持ちと外国人専用の「プラザ・セナヤン」という
デパートに行き、レトリーバー用のドッグ・フードを探しにいった。

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ペット・ショップでお目当ての輸入ドッグ・フードは直ぐに見つかったが、
貼られている値札を見て、その人は考え込んでしまった。
「うーん、茂木クン、これはちょっとこのまま持って帰れないよ」
「どうしました?」
「ご覧よ、このドッグ・フードの値段。我が家で雇っている犬の世話係
の月給の2倍だよ」
「・・・ほんとだ。つまり、ドッグ・フード1袋分の金額で地元の人間が
2人雇えるという事ですね」
「そういう事になるねえ。少なくともこの値札は彼らには見せられないなあ」

その頃の円対ルピアのレートは忘れたが、現在は1円が100ルピア。
通貨価値が100倍違うという事実が、私たち外国人の置かれた立場、というか
発展途上国の凄まじいインフレ事情を改めて認識させられたものだ。

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・・・日本の犬って、幸せだな。

写真は全てイメージ。3枚目は「大連雑学事典」に掲載されている
中国・大連の狗肉(犬肉)料理店。
イスラムの国インドネシアでは、当時は屋外看板にイスラム語以外の
サインボードを掲げる事を禁止している。
最近はこの規制も緩和されたようだが。
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by Mikio_Motegi | 2010-09-19 21:13 | 東南アジア