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ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

三島由紀夫の40回忌

今年の11月25日(木)はあの三島由紀夫の40回忌にあたるそうだ。
市ヶ谷の陸上自衛隊駐屯地で衝撃の割腹自殺を遂げ、日本中が騒然となった
あの事件は、当時小学校5年生だった私も鮮明に覚えている。

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三島の文学作品と言えば「仮面の告白」「金閣寺」「豊饒の海(4部作)」
といった緻密な構成の長編が代表格だろう。
「金閣寺」は間違いなく彼の代表作だが、あれは読むほうも相当のパワー
とエネルギーが要求される。中途半端な気持ちで読み始めると、作品の
吸引力に負けて、自分がどんどん主人公・「私」こと林養賢に同化して
いってしまうのだ。そしてその先にどんな運命が待っているかと思うと、
空恐ろしくなる。
だから私は個人的には「午後の曳航」「憂国」「青の時代」のような
中短編が好きだ。

また彼の数あるエッセイのうち「不道徳教育講座」は小市民のケチな常識・
人生観をあざ笑うかのような諧謔に満ちていて、今も愛読している。
たしか私が中学生の時、この単行本を家の本棚で見つけ読んでいたら、
亡父に「こんな本は読むな」と怒られた記憶がある・・・じゃ、何で
自分は読むのさ?と大いに不満だったが。

そこにはこんな事が書いてある:

・友人を裏切らないと、家来にされてしまう場合が往々にしてある。
たいへん長く続いた美しい友情を調べると、一方が主人で一方が家来の
事が多い。

・「実るゆえ、頭の垂るる稲穂かな」。
高い地位にいる人は安心して謙虚を装える。

・約束に縛られる人は人物の器量の小さい証拠。

・金持ちがいかにケチをしても「貧乏だから」と思われる心配が無く、
堂々とケチができる。

・・・なるほど、中学生には読ませたくない内容である。

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「牡丹」(「花ざかりの森・憂国」に収録:新潮文庫)という6ページに
みたない短編は、太平洋戦争中の中国での残虐な行為で名を成した軍人の
物語。
彼は戦争裁判から逃げおおせた後、東京の郊外に広大な土地を購入し、
そこに見事な牡丹園を造園する。咲き誇っている牡丹の数は、580本。
その580という数字は、彼が戦争中に中国で、手ずから念入りに虐殺した
女性ばかりの中国人死者の数と全く同じ。
つまり彼は美しい牡丹を愛玩することで、自分の悪行を余人に知られず
秘かに思い出にし、顕彰することに成功したのである、というお話。

本当の大悪人は自らの行状を反省したりしないものだ、という人間の本性を
シニカルに、且つ見事に描いている、妖しいまでの佳品だ。

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「盾の会」を創設し、自衛隊によるクーデターを呼び掛け、果たせず
自決したた三島。
私ごときが三島の生き様をどうこう言える立場ではないのは十分承知
している。ただ現在の日本の状況、尖閣問題や沖縄米軍基地問題で
顕著になった行政府の堕落、覇気の無い次世代、またそれを許してしまった
私たちの責任といったもろもろの状況を三島は40年前から察知し、
憂えていたのだ。
しかし身をもってそれを国民に訴えた三島の遺言は、その後の日本では
埋没してしまったままだ。

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写真は上から三島の肖像。

新潮文庫「金閣寺」の限定版黄金のカバー。没後40年なので、各出版社は
もっと派手に「三島フェア」を開催すると予想していたが・・・。

朝日新聞の夕刊記事。当時我が家で購読していた「週刊朝日」には
三島と、共に割腹自殺した森田必勝の血まみれの生首が陸上自衛隊総監室
に安置してある写真が掲載されていた。

毎年三島の命日である11月25日に東京の九段会館をはじめ、全国で
執り行われる「憂国忌」のHPより。
by Mikio_Motegi | 2010-11-07 10:33