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ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

「明日地球が滅びるとも、今日君はリンゴの木を植える」

「明日地球が滅びるとも、今日君はリンゴの木を植える」

作家の故開高健により有名になった言葉だ。
東欧の詩人の言葉で開高自身のものではないが、いかにも彼らしく、
私も座右の銘にしている。

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福島第一原発の事故とそれを巡る政府の発表、メディアによる報道、
そして一般人の対応を観察していると、1997年のアジア危機の際に
私が経験したインドネシア・ジャカルタでの出来事を思い出さざるを
得ない。

ひと言で表せば、「東京もジャカルタも一緒」だという事。

時系列に沿って何が起きたかを比較すると:

まずどちらにも社会不安という下地がある。
東京は、前日に起きた東日本大震災。未曾有の被害が確実だった。
ジャカルタは貧困、格差、独裁、民族対立等の恒常的な社会不安。

次に小さな事件が起きる。
東京の場合は、判明した原発の事故。
ジャカルタは、色々ある。列車の大規模な横転事故、ロックの
コンサート会場でのチケットを巡る暴動、サッカー場での暴動。

そして海外メディアがその小さな事件を母国に伝える。
母国では、編集者が見知らぬ国の珍しい事件に注目し、やや誇大に
取り上げる。食いつく視聴者。
その報道を見た、東京やジャカルタに住んでいる外国人の母国の家族、
友人が一斉に「大丈夫か?」と連絡を入れる。

「大丈夫か?」と聞かれた、その国に住む本人はびっくりする。
自分達は普段通り働き生活しているのに、小さな事件はあっても
「いつものことで、大したもんじゃない」と思っているのに、
母国では大問題となっているのだ。

驚いた本人が、友人や同僚に次々と疑問、確認の連絡を取る。
そして疑惑を確信するようになる。
「この国の政府は真実を隠している、メディアはコントロールされている。
真実は母国メディアでのみ発信されている」

・・・これが繰り返され、再生産され、拡大していく。

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日本のメディアが繰り返し報道するジャカルタでの暴動で、私達ジャカルタ
に住む日本人が最も驚き対応に苦慮したのが、日本に住む家族からの
心配の声だ。
例えば限定された地区での暴動を取り上げ、いかにもジャカルタ全市に
拡大しているかのようなイメージを与える過剰報道。
いちいち相手にするもの面倒な類のものだ。

「私たちはここに生き、働き、暮らしている。もちろん日本ではないので
苦労も多い。でも充分に生活と仕事を満喫している。
偏向した、センセーショナリズムに走るメディア報道ばかりを信じないで
ください」と何度訴えた事か。

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断っておくが、私は日本や東京を脱出した人々を怒っているわけではない。
これだけメディアで不安を煽られれば、逃げ出したくなるのは
ある意味正常な行為だ。誰でも我が身は可愛いものだ。

面白く且つ勇気づけれられるのが、日本を愛し、日本に住む外国人達の言葉。
脱出する同朋をしり目に:

・俺は日本が好きだ。だから何があっても俺は残る。
・例え再びの震災に遭っても、愛する日本で死ねたら本望。
・日本を逃げ出したお前達は恥を知れ、Shame on you !
・二度と帰ってくるな!

・・・凄いね。

フェイスブックでも、日本にとどまる外国人と、いち早く脱出した
同国人とがやりあっているwallを見た事もある人も多いのでは?

・・・なんだかここまでくると、シリアスな状況というよりも
「ドタバタ劇」の様相を呈して来た、とは言い過ぎか?

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西洋の故事にある「ハーメルンの笛吹き男」ではないが、誰かに吹かれた
笛の音色に乗って連れ去られたのも人間。

明日地球が滅びることが分かっていても、その次の世代の為にリンゴの木を
植えようと無駄な努力をするのも人間なのだ。
(ちなみに「ハーメルン」の笛に最初に導き出されたのはネズミ)

もちろん私は後者でありたいと思うが。 

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写真は上から故開高健。

ジャカルタの暴動で焼かれた華僑経営のビル。

枝野幸男。官房長官にして次期首相有力候補。フェイスブックより。

福島第一原発からの距離だというお節介なGoogle map。
だから何?と言いたい。

「ハーメルンの笛吹き男」 http://rushiskitchen.com より。
by Mikio_Motegi | 2011-03-21 10:06 | Japan Revitalization