NHK大河ドラマはどうなる?
2011年 05月 02日
毎回楽しみにしていたものだ。
今でも印象に残っている作品は「樅の木は残った」(1970年)と
「新・平家物語」(1972年)、それと「黄金の日々」(1978年)。
先週と先々週、偶然にも「樅の木」と「新平家」の総集編をNHKの
衛星放送で放映しており、懐かしさのあまり食い入るように観てしまった。

どちらも主役の演技が素晴らしい。
「樅の木」では原田甲斐を演じる平幹二郎の、「新・平家」は平清盛を演じる
仲代達也の、どちらも端正で静謐、時に豪快な演技がなんといっても
見ものだった。
二人とも当時は新劇「俳優座」の所属で看板スターだったが、大舞台で鍛えた
朗々たる声、セリフ回しや演技など、さすが、と言いたくなる。
両日共に夕方の2時間をしっかりと堪能させてもらった。

翻って、ではなぜ私は最近の大河ドラマを観なくなったのだろう、と考えた。
海外で生活していた8年間は毎週楽しみにして観ていたのに。
理由は簡単、「つまらない」から。
もちろんつまらなくなった、つまらなく感じるようになった理由は様々だ。
一番感じるのは、製作者があまりに視聴者におもねって、ストーリーを
現代受けするようにしてしまい、却って白けてしまった点。
例えば「新撰組!」で坂本竜馬と近藤勇が一緒に酒を酌み交わすなどといった
バカげたシーンを見せられると、あまりの下らなさにスイッチを切ってしまい
たくなる。
確かに大河ドラマは史実に忠実である必要はない、ドラマなのだから
ある程度の脚色はあっていい。だがあのシーンはアホな脚本家とアホな
演出家の視聴率欲しさからくるサル知恵すぎず、明らかにやりすぎだ。
自ずと限度というものがあるでしょう。
また過剰なBGMにも興をそがれる。シーンを盛り上げようとするあまり
大音量でBGMを叩きつけられると、白けてしまう。
俳優の下手な演技、下手な脚本をカバーする意味もあるのだろうが。
我々視聴者の方にも問題がある。
時代劇に相応しいかつての重々しい古文調のセリフが煩わしくなり、
現代口語調のセリフを求めている点。
またリモコンで簡単に番組を変えられ、時には2画面で観たりするので、
製作者も視聴者を逃すまいと「盛り上げる」シーンをてんこ盛りにしてしまう
傾向がある。
ひとつの番組内で静と動、静謐と躍動が交互する場面をじっくり観るからこそ
歴史ドラマは面白いのに。

そう考えると、今後も大河ドラマが面白くなる可能性は限りなく低いのでは
ないだろうか。
NHKの朝の連続ドラマ、大晦日の紅白歌合戦を含め、コンテンツが時代に
合っていない。
だからいっそのことそれら全部止めてしまった方がいい。
NHKは民放や韓流ドラマに対抗するのではなく、大がかりなロケによる
報道番組やドキュメンタリー、スポーツや演奏会の中継、ニュース解説、
歴史探訪などに徹するべき。それであれば受信料も気持ち良く払える
というものだ。

主役を張る最近の俳優の資質はどうか?・・・私は最近日本の演劇の舞台
を全く観ていないのと、好みの問題もあるので言及しないほうが良いだろう。
幸い私は若かりし頃の平幹二郎の「ハムレット」、仲代がこれも俳優座の
看板スターだった加藤剛と共演した「アントニーとクレオパトラ」、
「黄金の日々」の主役だった市川染五郎(現松本幸四郎)を
「オイディプス王」や歌舞伎で観た経験がある。
だが彼らも既に70代。今更新劇でもないだろうが、時代を受け継ぐ名舞台俳優
はいるのだろうか?

写真は上から 「新・平家物語」
「樅の木は残った」
「黄金の日々」
現在放映中の「江」。最初の3-4回までは面白かったが、後は尻つぼみに。
来年放映予定の「新・平家物語」。名優・仲代のイメージを払しょくできるか?

