美しく完璧な勝利-FCバルセロナ
2011年 05月 29日
(欧州サッカー協会)主催の各国クラブチーム・チャンピオンによる
王者決定戦を制したチームに渡される純銀製のトロフィーの愛称。
両サイドの大きな取っ手部分を表してそう呼ばれている。

スペインのサッカーチームFCバルセロナ(バルサ)が、2010-11年度の
UEFAチャンピオンズ・リーグを制した。
相手はイングランド・プレミアリーグの覇者マンチェスター・ユナイテッド
(マンU)。
毎回ヨーロッパ時間の夜8時45分にキックオフするこの決勝戦を日本で
TV観戦するには、早朝3時45分に起きていなければならない。
私は毎年欠かさずTV観戦しており、2008年の決勝の詳細はこのブログにも
書いた。http://valkyries.exblog.jp/8915568

例年平日に行われていたのだが、どういうわけか今年は日曜日だった。
おかげで睡眠不足のまま仕事に就く事もなく、こうしてブログに向えるのは
ありがたい。
今年の決勝は、あまりにも美しく速いバルサに、マンUが全く手も足も
出なかったという展開に終始した。
スコアは3-1。2点差だが、バルサはもう2、3点は取れたのではないか?
断っておくがマンUは2008年のUEFAチャンピオン。今年も世界最高峰の
レベルを誇るプレミア・リーグで断然の首位を走る、もの凄く強いチームだ。

この違いはどこからくるのか?戦術上の分析は専門家に任せるとして、私が
注目したのは試合前の出場メンバー発表の際。
ここで如実に表れた両チームの違いは、チーム生え抜きの選手の数だ。
マンUはウェールズ籍のギグスを入れてもイングランド人出身者は4人なのに
対し、バルサは7人がスペイン人。アルゼンチン人のメッシは幼少の時から
バルサで育成されたので、これを加えれば8人。

バルサの圧倒的な強さの源泉は、「カンテラ」と呼ばれる彼らの下部組織の
育成体制の充実にあると言えよう。
カンテラは、バルサの拠点カンプ・ノウスタジアムに隣接した寮で、
物心ついた時から一緒に寝食と練習を共にし、成長しやがて中心選手に
育っていく。
カンテラ出身者のコンビネーションは抜群だ。誰かが一旦ボールを持つと、
周囲が自然と反応する。彼が次にどんなプレーを選択するのか、手に取る
ようにわかるのだ。まさに以心伝心。当然団結力も強固だ。

そんなバルサの運営を財政面で支えているのは、ビッグネームの企業では
ない。「ソシオ」と呼ばれる、世界で14万人のぼる個人会員からの献金だけ
なのである。
ソシオは、自分たちが手塩にかける如く育てたカンテラ出身選手を応援
するのは当然。
また企業からのサポートが無ければ、ユニフォームにスポンサー企業のロゴを
縫いつける必要もない。
バルサのユニフォームの胸には "Unicef"のロゴが踊っているが、あれは
ユニセフがバルサのスポンサーなのではなく、バルサがユニセフに5年間で
総額950万ドル献金している為に着用しているロゴなのである。

敢えて名前を挙げると、イングランドのチェルシー、マンチェスター・シティ、
イタリアのACミラン、スペインのリアル・マドリードあたりが、
ビッグスポンサーの庇護の下、世界の超一流選手をトレードで買い漁り、
勝利と結果のみを目指しているように思える。
何年か前のチェルシーなど、スターティング・メンバー全員が非イングランド
人だったこともある。
それが世の趨勢なのはわかるが、生え抜き選手を重視し、若手を育て、
大スポンサーに頼らずに個人献金だけで世界一を遂げるバルサ。
かつて選手として大活躍し、監督としても大成功を収めたヨハン・クライフ
が掲げた「美しく、スペクタクルに勝利する」を至上命題とするバルサ。
私が心情的にどちらを応援しているかは、もうおわかりだろう。

写真は全て http://soccernet.espn.go.com より。
上から"ビッグ・イヤーズ"を掲げるバルサのイレブン。
試合前の大会HPイメージ。
敗色濃いマンUの監督ファーガソン卿(スーツ姿)。そろそろ引退したら?
バルサのカンテラ出身、カタルーニャの英雄グアルディオラ監督。
バルサ3点目を決めるダヴィド・ビジャ。
バルサの絶対的エース、リオネル・メッシ。ペレ、クライフ、
マラドーナの域に近づきつつある。
この試合を最後に現役引退を表明したマンUのGKファン・デ・サール。
長くオランダ代表を務め、イタリアのユベントスでも活躍した。
ASローマ時代の中田英寿に強烈なミドルを1試合で2発くらったGKとして
日本でも知られている。

