ジャクソン・ポロック 変革の夢と挫折
2012年 04月 07日
ジャクソン・ポロックの生誕100年を記念する「ジャクソン・ポロック展」
が開催されている。
ポロックは20世紀のアメリカを代表する抽象表現主義の画家と
讃えられている。
競売で落札された絵画としては史上最高額の136億円を記録し、
「ピカソを超えた存在」と称賛される文字通り現代美術の至宝である。
1912年にワイオミングで生まれた彼は、ネイティブ・アメリカンである
ナバホ族の砂絵の技法の影響を受け、キャンバスに直接筆を立てて描く
従来の手法から、キャンバスを床に置き、上から絵具を滴らせたり、
スナップを利かせて絵具を撥ねつける技法「アクション・ペインティング」を
確立した。
また「オール・オーバー」と呼ばれる、画面を同じようなパターンで
均質的に覆い全体と部分が似通っている規則性(フラクタル)で描かれた
その絵画は、作品というよりも、新しい作画行為の軌跡そのものが高く
評価されている。
ところがその絶頂期を迎えた直後、アルコール依存症の発症や、新しい
技法に挑戦するも確立できない焦りから、ポロックの混迷がはじまる。
黒エナメル一色の作品を描いたり、具象画を描いたりして評論家から
酷評され、また作品そのものも描けなくなってしまっている。
そして1956年、自殺行為とも言える無謀な自動車運転による事故で
44才という若さで死亡してしまう。
至宝と称された「アクション・ペインティング」技法で作品を描き続けて
いればいいのに、彼は何故それを棄て、新しい技法に挑んだのか?
何を目指して?
その技法が確立する前にポロックは死亡してしまった為、答えは誰にも
わからず、彼の作品は何も語ってくれない。
彼が目指したものなど私には理解できようもない。ただ、確立した技法も
名声も全て棄て、自己変革を求めてもがき苦しむ姿に、私は限りない
憧憬を憶える。どんなに成功を成し遂げてもひと時も同じ場所にいない、
変化し、とにかく進み続ける姿に。
写真は上から、彼の代表作 「インディアンレッドの地の壁画」
(テヘラン現代美術館所蔵)
アクション・ペインティングの光景
「カット・アウト」(大原美術館所蔵)
「黒い流れ」 (国立西洋美術館蔵)
「秋のリズム」(メトロポリタン美術館所蔵)
長谷川等伯「松林図屏風(右隻)」
・・・ここで何故等伯の「松林図」を載せたかというと、日本の墨絵の特徴
である余白の使い方が、ポロックの「黒い流れ」や「秋のリズム」等に
影響を与えているのでは?とふと感じたから。
そして私が最も好きなポロックの作品も、余白が何かを語る「秋のリズム」
なのである。
現代美術は良く分からんという人は多いと思う。私もよく分からない。
では私が何故抽象画、現代美術を好むかというと、その時の私の気分で
解釈を変えられるからだ。
疲れている時は癒され、元気が欲しい時はパワーをもらえる。
そんな自分の都合に合わせた鑑賞が出来るのが抽象美術、現代美術では
ないだろうか?
もっともこの解釈も以前出逢ったある女性からの受け売りだが・・・。