ホテルって誰のもの?都ホテル東京
2006年 10月 28日
まずこの絵を見て頂きたい。
先日宿泊した都ホテル東京の、客室階エレベーターホールの天井に届くほどの大きさで掲げられている。題材は大仏様、或いは観音様といった類のものであることはすぐにわかる。アジアに居住する欧米人が好む題材である。
2001年にシンガポールのインターコンチネンタルホテルで和食レストラン「サントリー」を導入する際、当時のドイツ人総支配人がこれと非常に良く似たモチーフの巨大な絵画をサントリーのエントランスに飾ろうとして、プロジェクトのメンバー全員に大反対され撤回したことがあった。その絵の作者は総支配人夫人の友人で、夫人が既に購入していたものだった。
都ホテル東京の悲劇は、こうした題材の絵画をホテルのパブリック・スペースに持ち込むことに異議を唱える人がいなかった、或いは意義が通らなかったことにある。参考までに、この絵画は同ホテル総支配人ジョン・バンダ氏本人の作品なのだ。
ホテルの総支配人たるもの、どういう資質が必要でどういうスキル、能力を持つべきかといった「総支配人論」はこのブログで追々言及したい。
だが総支配人たるもの、断じて自分のプライベートな作品をホテルのパブリック・スペースおくべきでは無い、と私は強く信じる。総支配人は自分の力量をホテルのパフォーマンスで示すべきで、余技にすぎない絵を飾るなど自己顕示欲丸出しの行為は厳に慎むべきである。
このホテル全体に何枚あるか知らないが、総支配人が自作品を飾ることを提案した際、その芸術性やモチーフがホテルのインテリアのテーマと一致するかどうか、ホテルのスタッフに議論できる余地はあるだろうか。この実物を目の当たりにしたときの当時の都ホテルのスタッフの当惑した表情が目に浮かぶ。或いは彼らは唯々諾々と受け入れたのだろうか。
都ホテルのスタッフに、直接忌憚の無い意見を聞きたいものである。