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ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

格差と貧困

格差の問題を考える時、私はどうしてもジャカルタで実際にこの目で見たスラム街のことを思い浮かべてしまう。

1996年から約1年半、私はジャカルタのシャングリ・ラ ホテルに勤務していた。
住んでいたジャカルタ市内の「シンプルック」という地域は、すぐ近くにナショナル・スタジアム、名門のスナヤン・ゴルフコース、新築の高級デパート、国立ガジャマダ工科大がある高級住宅地だ。30戸ほどの瀟洒なコンドミニアムは、シャングリ・ラホテルのエグゼクティブ連中の他、日系商社の支店部長クラス、日本大使館の1等書記官クラス等、High Endな住民達ばかりだった。15メートルほどのプールとバスケット・ボールコートが1面あり、芝生の庭には毎週末にバーベキュー・パーティーがひらかれている。私の部屋は角部屋で、右手に広がるシンプルックの高級住宅街を見渡せば、小さな美術館かと見まごう程の華僑の大物やインドネシア政府の高級官僚が住む贅を尽くした豪邸ばかり。
ところが左手を見下ろすとそこはスラム街。50メートル四方ほどの土地に何千という人々が暮らしている。家内が発見したのだがそこには「テレビ屋」さんがある。テレビを売っている店ではなく、家にテレビを持たない住人達がお金を払って見に来る街頭テレビ店のことだ。数人の男達が日がな一日中、本当に一日中ぼーっとテレビを見ている。雨がふれば道はどろだらけ、ゴミは自分達で焼き払うかそこらに堆積するか、或いはどぶ川に垂れ流し。よくフィリピン・マニラ市近郊のスラム街が日本でも紹介されるが、あれと似たようなものだと想像すれば、この地域の雰囲気が分かると思う。
当然犯罪の温床で、シンプルックの豪邸には「ジャガー」と呼ばれるガードマンが数人、24時間体制で常駐しているのが当たり前の光景だ。

スラム街の彼らに雇用機会はあるのだろうか?働けば収入を得て、そこにインセンティブが働いてやがてはこのスラム街を抜け出すことができるのだろうか?税金はおさめているのだろうか?日本で議論されているようなセーフティ・ネットがあって、政府は彼らの生活を保障しているのだろうか?疑問は尽きない。

今日、大阪・西成区の「あいりん地区」と呼ばれる地域で、3000名以上の住人が不当な住民登録をしているニュースが流れた。実際に住んでいない1000名以上の人々が1棟のビルに住民登録をしていて、行政が正式な登録を呼びかけて騒動がおきている。住人達は手にしたデジカメで騒動を録画し、ハンドマイクで行政側に怒鳴りまくっている。
誰がこの住人達にデジカメやハンドマイクを供給しているのだろう?本人たちの持ち物なのだろうか?それとも支援組織か誰かが買い与えたのだろうか?1000人もの人たちは実際はどこで暮らしているのだろう?これも疑問が尽きない。

ふたつ確実なのは、ジャカルタ市内に1棟の空きビルがあったら間違いなく1000名以上の住人が「実際に」住み着くだろう。またもしこのような騒動がジャカルタで起きたら、デジカメやハンドマイクを手にしたスラム街の住民はさっさとこの場を離れ、街の古買屋に高値で売りつけている、ということである。

写真の右側の白い台形の建物がシャングリ・ラ ジャカルタ。中央の高層ビルはインドネシア中央銀行ビル。http://skyscrapercity.com/showthread.php?t=2047より。
二棟とも華僑系インドネシア人、オズベルト・ライマン氏所有のビルだ。

下の写真はジャカルタのスラム街。http://www.capedmaskedandarmed.com/photo/garbagering/index.html
より。
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by Mikio_Motegi | 2007-01-29 22:28 | 東南アジア