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ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

匹夫(ひっぷ)の勇

 本日の京都商工会議所 国際ビジネス促進協議会の懇談会「タイ・ベトナムとのビジネス交流」で、コーディネーターを勤めた同志社大学の林廣茂(はやし ひろしげ)教授が、日本企業は海外に進出する際の準備が足りない、という指摘をしていた。

 パネリストで島津製作所(あのノーベル賞に輝いた田中耕一さんの会社)の部長がベトナム進出の際のエピソードが語っていた。島津は1997年にホー・チ・ミンに現地法人を立ち上げたが、担当者はベトナム語はもちろん法律、慣習等の調査等、全く下準備せずに一人で出向いていった。現地で何か問題にぶち当たった時は、街中の日本料理屋で日本人駐在員らしい人物を見かけると片っ端から声をかけ、ベトナムでのビジネスのノウハウの教えを乞うたのだそうだ。
驚いたのは、そのアホな事例をその部長氏はいかに島津が勇敢な企業だったか、徒手空拳でいかに困難を乗り越えたかを言い立てている。空恐ろしいことだ。将に匹夫(ひっぷ)の勇である。

 実は同じ時期の同じような事例を私はやはりジャカルタで知っている。
私の勤務していたシャングリ・ラに滞在していたメーカーの駐在員を「なだ万」で接待していた時のこと、私が彼に「御社のジャカルタ進出の際、どんなマニュアルがあったのですか?」と聞いた。
私は「JETROか日系商社、日系銀行に教えてもらった」という程度の答えを期待していたのだが、彼は首を振って「これですよ」と言った。
彼が手にしていたのはジャカルタの日本人向けイエローページの、「ジャカルタ進出の手引き」という4-5ページの案内だけだった。

 そのメーカーが現地法人を立ち上げた翌年に勃発したあの大暴動で、駐在員達はさっさと帰国して会社を閉鎖してしまったのは言うまでも無い。
私企業のことなので知ったことではないが、彼らがいったいいくらコストをかけて進出し、いくら無駄になったのだろう。

 結論ではないが、やはり日本人には「言葉の壁」が問題になっているのは事実だろう。 
よく外国人とコミュニケーションをはかるのに、言葉は要らない、必要なのは心だ、という人がいる。こういう人は外国語が苦手か、苦手を克服しても嘗て失敗した時の体験をトラウマのように引きずっているか、どちらかである。
心も大事だけど、心を表現する方法である言語も大切だ。
 「もっと準備を」とグローバルな世界に生きるビジネスマンに言いたい。心を磨き、言葉、文化、慣習、法令等を熟知し、それらを通じて周到な準備をするべきだ。
 もっとも言葉の問題を日本の中・高・大学教育に於いての英語教育に帰したら、混迷は深くなるばかりだが。
by Mikio_Motegi | 2007-03-05 22:49 | 東南アジア