労働力増加の切り札
2007年 03月 09日
ここで滞東南アジア歴8年(滞米とか滞欧とか言えないのが口惜しいが)の自称国際派の私が「開国論」を標榜し、もっと外国人労働者を移入せよと唱えるかというと、ちょっと違う。
私の住んでいたインドネシア、シンガポール、そしてマレーシアは多民族国家であることは誰でも知っている事実だ。多民族ということは多宗教でもあり、同時に多言語であった。こういうところから日本を眺め、将来様々な肌の色の人々が暮らす日本を想像したかというと、実は全くできなかった。今流行の"Diversity/多様性"について言えば、私は「総論賛成・各論反対」の立場である。悲観主義者なのか、或いは真の国際派ではないのかもしれない。
なんでこんなことを書くかと言うと、外国人労働者を増やす前にもっとやるべきことが山積していると思うからだ。具体的にはお年寄り、女性、ハンディキャップのある人をもっと活用できる体制、女性が安心して子供を産み、育てられる体制の整備を急ぐべきだ。
日本では小さなお子さんを抱えている女性の就業機会は本当に限定されている。
対してシンガポールやマレーシアでは子持ち女性が会社のエグゼクティブである例なんて腐るほどある。母親の社会進出をバックアップするサポート体制がしっかり出来ているからだ。その為に例えばフィリピン等からベビーシッターのできる労働力を日本が移入するのなら、賛成だ。
もちろん国民全体が「子供は宝」という意識を共有することも大事だと思う。
歴史家・歴史小説家の塩野七生(しおの ななみ)は「自国の人材の活用を忘れたのでは元も子もない。亡国の悲劇は人材がいなくなったがゆえに起こるのではない。- 国家であろうと私企業であろうと、衰退期に差し掛かるや、なぜか人材活用のメカニズムが狂ってくるのだ」と言っている。(「再び男たちへ」第22章 文春文庫刊)
彼女の理論に従えば、日本は衰退期に差し掛かっている、ということになる。