戸塚宏 本能の力
2007年 05月 26日
(新潮新書刊 680円)
結論として、私は80%以上彼の意見に賛同する。
戸塚氏は深い見識と強い信念のある人、と見た。容貌が怪異でかつ
強面(こわもて)なイメージだったが、マスコミが創った虚構だったということが
この本を読んですぐにわかった。
戸塚氏が主催する全寮制の戸塚ヨットスクールは数多くの不登校生徒、
素行不良生徒を受け入れ、独特の「脳幹教育」という方法で更正させてきた。
が、1983年に不慮の事故で生徒5名を死なせてしまい、監禁・暴行容疑で
逮捕。懲役6年の刑を受け収監。昨年4月に刑期満了で出所。
その間石原慎太郎が戸塚氏をずっと支援してきて、彼のエッセイでも
度々取り上げられていたので私も注目していた。
私がこの本を読んだのは発刊されて直ぐの先月のことだ。
実は最近、公立の小学校に二人の娘を通わす私は、教師の力の無さに
辟易している。
昨日も授業参観に行ってきたが、4年生の学年合同授業で娘の隣のクラス
の生徒の授業態度は酷かった。
授業中まるで教師の言うことを聞かず、奇声を発し、貧乏ゆすり、
徘徊が絶えない。若い女性担任教師は、だらしない姿勢の生徒を手取り
足取り直してあげ、騒ぐ生徒には小声で優しく「しー」と諭し、徘徊する生徒
は肩を抱え席に誘導している。
私に言わせればあんな生徒は一度ぶん殴るか、廊下にバケツを持ったまま
1時間でも立たせておけば少しは直る。
しかし、今の教師にはそれが出来ない。自分達も同じような教育を受けて来た
から、「体罰」の振るい方がわからないのだ。
幸い娘のクラス担任は年配の教師で、びしっと躾ている為、そのような生徒は
いない。だが、実は昨年の娘のクラスも酷かった。
今年になって担任が若手から年配に代わったとたん、まともになったのである。
将に教師の個人的力量がどれだけ影響するか、の実例であると言える。
娘の今の担任が戸塚メソッドの信望者かどうかは知らないが、例えば戸塚氏は
体罰といえど強く叩けば良い、と言っている訳ではない。
体罰の方法として「恥をかかせる」ことが有効で、他の生徒の前で軽くお尻を
叩いたり、廊下に立たせることで子供は許容範囲を学習し進歩するのだ、
と言っている。
私がジャカルタのシャングリ・ラに勤めていた頃、同じコンドミニアムに
住んでいたフランス人の料飲部長オッフェ氏の、当時7歳になるお嬢さんへの
教育はそれは厳格だった。例えば皆でプールサイドでバーベキューをして
いる時、お嬢さんがちょっと羽目を外すと直ぐにきつく注意し、聞き入れないと
衆目の前でプールに放り込んで叱責した。
日本人は目をそむける光景かもしれないが、私達夫婦は感銘を覚えた。
今思うと、水に放り込んで窒息の恐怖を味あわせるということで、オッフェ氏は
戸塚氏と同じ体罰を加えていたのだ。
義務教育の目的は国を継続的に繁栄させることにあり、その為国家予算が
組まれていることを忘れている人が多いのではないだろうか。
国の繁栄とは、例えばどこかの国と戦争状態に陥っても打ち勝つこと、
という意味もある。
目の前の生徒達を見て、彼らが将来この国を繁栄に導いてくれるのか、
他国との競争に打ち勝つことが出来るのか、私は大いに不安だ。
義務教育の課程で一度日本人生徒全員を戸塚氏のヨットスクールに
ぶちこんで、2,3度海に放り込んでくれないかと真剣に考えている
この頃である。
上下とも写真は戸塚ヨットスクールのホームページより。