祖母井のリーダー論
2008年 04月 05日
・・・誰だか知らない人が殆どではないだろうか。?
第一、読み方からして分からない。

祖母井秀隆(うばがい ひでたか)は現在フランスサッカー・リーグ2部の
「グルノーブル」というチームのジェネラル・マネージャー(GM)。
1951年生まれの57才。前職はJリーグのジェフ・ユナイテッドGM。
かの前日本代表監督イビチャ・オシムをジェフに招聘した人である。
昨年彼のグルノーブルGM就任のニュースを聞き、日本人でありながら
外国のサッカーチームでGMを勤めるとはどんな男だ、と興味を持った。
彼の生涯は「育成」、それもエリート集団ではなく、落ちこぼれ組の育成に
注がれてきた。
ジェフ・ユナイテッドはJリーグ発足後常にJ2降格争いをしている弱小
チーム。年間予算もJリーグのチームの中で平均的。
そんなお荷物チームを、99年にGM就任後次々と新機軸を打ち出して
大改革を遂げ、ナビスコ・カップ2年連続優勝をはじめJリーグで常に
上位を争うチームに仕立てあげた。
前職の大阪体育大学のサッカー部コーチ時代は、1部チーム監督と
指導法で対立し2部チームの監督先任に。
その2部チームを関西社会人リーグ制覇に導き、そして翌年は何と
日本リーグ2部に昇格させてしまう。
そんな彼を理解するキーワードは2つだと思う。
1つ目はコミュニケーション力。
どんな相手でも懐に入り込んでしまう人間性。
ヨーロッパの名門チームからの破格待遇の招聘にも頑として応じなかった
イビチャ・オシムの胸襟をも開かせてしまう。
もちろんドイツ語が得意な事もコミュニケーションに大いに寄与している。
2つ目は一流の環境で身に付けた理論と人脈。
ドイツのケルン体育大学というサッカー指導者のエリートが集う環境で、
最新のサッカー戦術を学ぶ。
彼が交流を深めた世界中から集まったチームメートのうち、4人が各国代表
チーム監督になったという。
しかし彼は決して恵まれた環境でこれらのスキルを身につけたのではない。
23才でドイツに渡ったが、観光ビザが切れ不法滞在で港湾荷役労働を
しながらドイツ語を身につけた。
ケルン体育大学も相当遠回りして卒業している。
要は情熱・行動力・語学なのだろう。
祖母井がGMを勤めるグルノーブルのオーナーはIT系の日本企業だ。
ただし地域密着型のヨーロッパのサッカーチームでは、オーナーが誰であろう
と関係ない。サポーターは勝利に飢え、勝つことのみをチームに要求する。
彼にかかるプレッシャーは日本では想像も出来ないくらい強い筈だ。
そのチームは今季フランスリーグ1部昇格が可能なほどに仕上がっている
という。
私は昨年11月の「ホテリエの国際競争力」というブログで、日本に
ヒルトンが進出してから40年になるのに外資系ホテルに日本人GMが
少なすぎると嘆いた。まして海外のホテルの日本人GMなど皆無なのでは
ないだろうか?
祖母井は「祖母力(うばぢから)」という自伝的リーダー論を本年上梓した
(光文社刊 1575円)。
彼の生き様はホテルのGMを目指す人、よりスキルアップを望む人にとって
大いに参考になると思う。

