人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ホテル、レストランなどホスピタリティ・インダストリに特化したヘッドハンター茂木幹夫(もてぎ みきお/ www.kyotoconsultant.net)の「非首狩族的な」日々。


by Mikio_Motegi

クリスチアーノ・ロナウドの時代

先日の5月22日(木)早朝、いつものようにフジテレビの「めざましテレビ」を
見ようとテレビのスイッチをつけた人は、飛び込んできた異様な映像に
驚かれただろう。

クリスチアーノ・ロナウドの時代_c0094556_15502331.jpg


この日は特別番組で、UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグ
決勝戦を早朝3時半から放映していたのである。
会場はモスクワのルジンスキ・スタジアム。
1980年のモスクワ・オリンピックのメーン・スタジアムで、当時は
「レーニン・スタジアム」と呼ばれていた。
大粒の雨の降る中、22人の男達がモスクワで演じた戦いはまさに「死闘」と
呼ぶに相応しいものだった。

1955年に創設された、欧州の各国リーグの優勝チームと上位チーム、
計32チームが戦うチャンピオンズ・リーグは、UEFAでのクラブチームの
頂点を決め、且つ世界で最も権威のあるクラブチームの戦いである。
世界で10億人以上いるといわれるサッカー人口の、将に頂点を極める
大会なのだ。

決勝を戦うのは共にイングランドの2チーム、マンチェスター・ユナイテッド
とチェルシー。
日本ではマンチェスター・ユナイテッドを「マンU」と略すが、私が以前
暮らした旧英国植民地であるシンガポールやマレーシアでは親しみを
込めて「マンチェン」と呼ぶ。

イングランドのチーム同士が決勝を戦うのは史上初だ。
武骨な戦い方が特徴のイングランドは世界のモダン・サッカーの潮流に
ついていけず低迷していたが、今大会は準決勝4チームのうち3チームを
占めた。
今世界で最も人気・実力の高いリーグであると言えるだろう。

少々専門的になるが、UEFAの統計を見ると今回のチャンピオンズ・リーグ
参加32チーム中で最もBall Posession(ボール占有率)が高いのは
スペインのバルセロナで平均59%。
2位以下が同じくスペインのレアル・マドリッドの58%、セビリアの54%と続き、
チェルシーは51%で11位、マンチェンに至ってはやっと50%で14位という
ていたらく。

またShot on Goal といってゴールの枠内にシュートが飛んだ本数は
やはりバルセロナが1試合平均7.15本で1位。2位にイタリアのラツィオが
7本、3位がドイツのブレーメンで6.5本。
チェルシーは6.46本で4位と健闘しているが、マンチェンはたった5.08本で
18位と下位に甘んじている。

この辺りがサッカーという競技の難しさで、ボールを長くキープしても、
或いはシュートの正確性を高めても、(比較的優位に試合を運べるが)結果
には結びつかないのである。

その証拠に今回の決勝戦も、前半はマンチェンが65:35と占有率で圧倒
していたが、1点しかリードできずに前半終了直前にチェルシーに同点
ゴールを許している。

クリスチアーノ・ロナウドの時代_c0094556_15511079.jpg


さて折角の決勝戦だが、残念ながら旧レーニン・スタジアムのピッチ・
コンディションは良くなかった。人工芝からこの試合に合わせて天然芝に
急遽張り替えた為、スリップする選手が相次ぎ興がそがれた。
特にチェルシーの得点はシュートに備えたマンチェンのゴールキーパー
が芝に足を滑らせバランスを崩した際に生まれたものだし、逆に
ペナルティ・キックをチェルシーの選手が外したのも、ボールを蹴る際の
軸足がスリップしたからだ。

クリスチアーノ・ロナウドの時代_c0094556_1625367.jpg


さてさて日本でも数年前にゼロックスのコマーシャルに登場した、マンチェン
のポルトガル代表クリスチアーノ・ロナウドである。
日本のマスコミが視聴率を稼ごうと無理やりスター扱いしたような選手に
私は全く興味はないが、C・ロナウドは別格だ。
まだ23歳の若者だが、2006年のドイツでのワールドカップで世界の注目
を浴びた。
スリムな体型、モデルのような顔立ちだが、彼のフィジカルとスピード、
そしてクイックネスは将に現代サッカー界の頂点に位置する。
無理な状況でもドリブルで果敢に1対1の勝負を挑み、殆ど勝つ。
ボールのないところでも爆発的なフリー・ランニングを繰り返す。
ヘディングも高く・力強く、フリーキックを蹴らせたら悪魔のような無回転
シュートが唸りをあげてゴールを襲う。
今大会でも得点王に輝き、文字通り世界のスーパースターに仲間入りした。

クリスチアーノ・ロナウドの時代_c0094556_16222037.jpg


彼ならばマラドーナ以来絶えて久しい、ペレ、ベッケンバウアー、クライフと
並び称される「伝説のスーパースター」になれるかもしれない。

クリスチアーノ・ロナウドの時代_c0094556_15512983.jpg


結局朝の3時半から7時近くまでテレビ観戦をしてしまった。
ところが不思議なもので、これだけ内容の濃い試合を見せられると体内の
アドレナリンが活性化するのか、日中も全く眠くならない。
ヨーロッパで行われる夜中の日本代表のしょーもない試合(それでも応援
してしまう・・・)後の深い脱力感と後悔が、今回は全く感じられないのだ。

6月からは今度は国代表の欧州ナンバーワンを決める「ユーロ2008」が
開催される。今回以上の興奮が期待でき、今から楽しみだ。

写真は上から、マンチェンのベテラン選手スコールズ。鼻を強打し出血が
止まらない状態でもプレーを続行、見事にC・ロナウドの得点を演出した。
C・ロナウドのヘディングシュート。
スリップしPKを外した直後のチェルシーの主将テリー。
「彼がいなければここ(決勝)まで辿り着かなかった」とは、テリーについて
マスコミにコメントを求められたチェルシーのアヴラム・グラント監督の言葉。
男の世界だねー。
マンチェンの監督ファーガソン卿に祝福されるC・ロナウド。
優勝カップを掲げ歓喜のマンチェン。

(統計は uefa.com 、 写真は soccernet.espn.go.com より)
by Mikio_Motegi | 2008-05-24 15:51 | サッカー、スポーツ