一つだった。
子供たちの学校給食にも時々「竜田揚げ」や「鯨カツ」が登場する
くらいだから、人々は何の違和感無く食している。
牛・豚・鶏肉ほどの頻度ではで無いにしろ、かつては1年に数度は
食卓を飾っていた。

今冬の南氷洋での日本の調査捕鯨が、目標捕獲頭数を大きく下回ったまま
終了した。
農林水産省の発表によると、理由は「シー・シェパード」による執拗な
操業妨害に堪えきれなくなったため。
シー・シェパードのついては今更改めて言及する事もないだろう。
自分達の狭量な信条・価値観を他人に押し付け、強要する為には手段を
選ばず暴力行為も辞さないという連中で、その辺りのならず者と全く一緒。
スマトラ沖やイエメン近海の海賊と同類だ。
問題は、暫定的ではあるがIWC(国際捕鯨委員会)という国際機関でも
認定されている調査捕鯨を、海賊の妨害を理由に打ち切ってしまう
日本政府にある。
もちろん直接の脅威にさらされている調査捕鯨団の船員に責任は無い。
彼らを守れない責任は、非が相手にあるのにも拘わらず相応の対抗手段を
執れない日本政府にある。

学生時代からスクーバ・ダイビングにのめりこんでいた私は、かつて
小笠原に約3週間滞在した際、ザトウクジラやイルカ達に日常的に接した。
日に2回のダイビング・スポットへの行き帰りに出会うザトウクジラの
ブリーチングと呼ばれる全身ジャンプ、目の前に浮上した際に漂う
彼らの生々しい体臭、水中で聴く彼らの歌声、海中で私の足の下を
すりぬけて行ったイルカ達が巻き起こす水の衝撃。
小笠原の大自然と共に、単純に大きく速く力強いもの、神秘的な存在
への畏怖を感じ、その後の私にある指針をもたらしてくれたものだ。

日本の捕鯨は欧米のそれと違い、捕獲した鯨の殆どの部分を有効に使う。
大腸だけはどうにもならないので海に捨ててしまうが。
かつての欧米の場合、捕獲した鯨を船上で解体し、貴重な鯨油のみを
絞りとり後の鯨肉の部分は全て捨ててしまう。まさに海のギャングだ。
どちらが資源を有効活用しているかは明白だ。
日本の沿岸捕鯨の基地である千葉県の和田浦、和歌山県の太地等に
行けば、必ずそこには鯨の霊を祀る神社がある。
かように我々は鯨という自然の恵みに感謝し、恐れと慈悲を持って
扱ってきた歴史がある。

そうした文化は、暫定的な処置ではあるが、IWCという国際機関から
認定された調査捕鯨という形で存続されてきた。
その貴重な文化遺産を、シー・シェパードというならず者の暴挙により
止めてしまっていいわけがない。
これでは尖閣諸島問題と同じで、日本はほんのちょっと暴力的な威嚇を
すれば何でも言う事を聞く、領土も文化も棄ててしまう国家という
イメージを、ますます強く他国に与えてしまう。

断っておくが、私は日本の捕鯨に反対する意見を全て否定するつもりは
ない。文化遺産としてだけでなく生態系の維持、資源枯渇の危惧、
動物愛護といった様々な面で捕鯨について議論をしていくべきだと思う。
ここではあくまでもシー・シェパードの蛮行と日本政府の姿勢に対し意見を
述べているだけだ。
調査捕鯨が中止されて、すぐに鯨肉の流通が凍結してしまうわけではない
という。むしろ問題は、日本人の生活に関わってきた鯨肉を、我々が
あまり食べなくなってしまった事にもあると思う。
鯨肉を食さなくなれば、鯨への愛着も捕鯨の意義も実感として湧いて
来ないのは当然だろう。
お勧めは「ひげ鯨類」に属するミンククジラ。
お腹の脂肪分を抜いた後の皮の部分である「コロ」や舌の部分の
「サエズリ」は、おでんにすると美味しい。
鯨肉と水菜だけで頂く「はりはり鍋」も冬の味覚に欠かせない。
赤身の刺身は、上質の馬肉の味わいだ。
貴重な食文化である鯨肉を、是非一度試してみて欲しい。
こうしたメニューは関西以西の居酒屋では普通に見られる。

写真は上から 鯨肉の部位 http://love123.blog.so-net.ne.jp
シー・シェパードのよる調査船への妨害活動
ザトウクジラのブリーチング。トラベルプロ・ブルーダイバーズHPより
(私は小笠原でこのようなジャンプに日に数回遭遇した。尾の先端が
完全に水面上に上がるほどのものも数度見たものだ)
千葉県勝山市にある鯨塚。「東京湾内外の鯨塚」
www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3011/haka-toukyou.html
2008年のIWC総会
美しく盛られた鯨肉 「平戸くじらワールド」のHPより
"Christina Aguilera"が初めて出演した映画「バーレスク」"Burlesque"
を観てきた。

田舎出の女の子がロスアンジェルスという大都会で苦闘し、栄光を
掴み取るという典型的な「アメリカン・ドリーム」物語だ。
まさにアメリカのパワーの源泉を見せつけられるようなストーリー。
かつてヒットした「フラッシュ・ダンス」や「コヨーテ・アグリー」と同じ
系譜の作品だ。
日本映画にこの手のサクセス・ストーリー的な主題の作品があまり見当たら
ないのは何故だろう?
市井の人々の日常を丹念に描く、或いは人間の意外性を描く(多分)芸術的な
佳作は多いのだが、欲望丸出しのダイナミックな、観る者を圧倒するような
作品が少ないような気がする。
この現象だけで「日本は矮小化している、アメリカは相変わらず元気が良い」
とステレオタイプ的な分析をするつもりはない。
ただ立身出世物語がエンタメ業界で日本人に好まれない主題になっている、
とは言えるだろう。
今のエンタメ業界は、揚げ足取り、或いはどうでもいい小市民の話題
ばかりだ。
大相撲の八百長など毎日取り上げる話題か?下っ端力士の貸し借りなんぞ、
どうでもいい。マスコミなら元横綱や親方衆の腐敗の深部に切れ込め。
22才の大人のアスリートに向けて「・・・ちゃん」付けで熱狂するメディア
は、幼児体質そのものだ。
便所掃除をする自分の婆さんの歌がそんなにすごいか?
あんなのは公共放送でなく、コミュニティ放送で流せばいい。それを
長々と8分間も聞かされて、よく視聴者は怒らないものだ。
私はテレビであのメロディが流れたら即番組を変える。あの私小説的な
小市民性が大嫌いなのだ。

・・・すみません、つい興奮して話題がそれた。「バーレスク」である。
アイオワの田舎から出てきた娘が、抜群の歌唱力とダンスで「バーレスク」
というエロチックなショーを売り物にするクラブで認められ、爆発的な
人気を博すという物語。
ストーリーは確かにB級だが、クリスチーナ・アギレラの圧倒的な歌唱力、
存在感に目を見張る。彼女が演じる「アリ」がチャンスをつかみ、はじめて
ステージでソロを歌う場面では、私は鳥肌が立った。
あの小さな身体の何処からあのパワーが生まれるのか?

私は彼女が2008年のローリング・ストーンズのライブ映画"Shine a light"
でミック・ジャガーと"Live with me"を熱唱した時から注目していたが、
最近では声と美しさに円熟味が増した。
今や押しも押されぬ世界の「ディーバ」になったと言えるだろう。

共演のシェール"Cher"も怪演。バラード調のタイトル曲をシンプルに歌い
上げたが、さすがの貫録だった。またStanley Tucci(Shall we dance?
で竹中直人の役をやった人)もいい味を出している。
ストーリーが単純なので、映画評論家や玄人の評価は多分高くないだろう。
ただ私のように音楽が好きで、ミュージカルを観るようにクリスチーナや
シェールの歌、バックバンドの素晴らしい演奏やコーラスを楽しめた人々に
とっては最高に評価される映画だったのではないか?

封切り後1カ月以上たつのに映画館は満員。男を楽しませる女たちという
古臭くエロチックなコンセプトにもかかわらず、観客の80%が若い女性
なのも印象的だった。
自分の才能を信じ、努力を続ければ「アメリカン・ドリーム」は実現する。
そんな単純なストーリーに夢を馳せる女性は、案外日本にも多くいるの
かもしれない。
ただ私のような立場の人間から言わせてもらえば、アリは常に
「自分を売り込む」事を忘れなかった。そしてそれが功を奏したのである。
日本の女性達もこの映画を観て「自己主張をする勇気」に気がついて
くれればいいと切に願う。

クリスティーナ・アギレラにはこれからも注目していこうと思う。
もっともそんな彼女も、先日の「スーパーボウル」のオープニングの
アメリカ国歌斉唱で、緊張のあまり歌詞を間違えるという失態を演じた。
その時は即座に自分ブログで失敗を認め非を詫びた為、その潔い姿勢が
かえって評価されたという。
ホテルランキングを掲載している。
ビジネス誌でこの手の特集を見るのは久しぶりのような気がしたので、
書店でパラパラとページをめくってみた。

結論として、話のタネとしては面白いが、メディアのランキングなるものに
惑わされる事の無いよう自分の価値基準をしっかり持つ必要があるな、
と感を強くした。
まず雑誌を手にとって「ふんふん」と読み進むうち、知人のある外資系
ホテルの経営者の名前が、誤植というか、それ以前のとんでもない別人の
名前になっているのを発見。
どうせ電車内で読み捨てられる週刊誌だが、掲載する個人名のチェックも
しないのか、とがっかりした。
一度疑ってしまうと次々に突っ込みたくなるのは無理からぬ事で、彼に
まつわる情報もピンボケだし、他のマーケット情報も明確な間違いがある。
そもそもアンケートの抽出方法までおかしい気がする。
何故ビジネスマンが中心のアンケートで、ディズニーランド周辺のホテルが
トップクラスにランクインするのか?
私の知り限りあの周辺のホテルの利用客に、ビジネス目的で泊まる人は
極めて少ない筈だからだ。

さて敢えて名称は明かさないが、私がかつて勤務した東南アジアのさるホテル
では、世界中のビジネスマンが購読する雑誌に掲載されるホテルランキングに
自らのホテル名を載せるべく、プロジェクト・チームを組んだ事がある。
そのチームを統括した女性のマーケティング部長は、私たちメンバーの
前で、「ミキオ、それなりの方法を使えば・・・誌のランキングにこのホテル
を掲載させるのは簡単なのよ」とウィンクしたものだった。
彼女によると、その雑誌の購読者層は欧米の金融マンの比率が非常に
高い。彼らは所属する会社と法人契約を結んでいるホテルを選んで宿泊する。
よって具体的な手順として:
1.営業チームが欧米の金融機関と多く法人契約を締結し、彼らの宿泊を
促進する。つまり・・・誌のホテル・ランキングのアンケート対象者が数多く
宿泊するように計る。
2.彼らが実際に宿泊したら、滞在中に特に手厚くサービスを施す。
例えば客室の無料グレード・アップ、総支配人主宰パーティへの招待、
特別なアメニティの手配、空港送迎サービス等。
3.彼らをリピーター化する為のフォロー・アップを綿密に行い、ついでに
・・・誌のアンケートの際は宜しく、とお願いする。
・・・どれもこれも宿泊客を大事にする当たり前のサービスのように見えるが、
「欧米の金融機関」にターゲットを絞る、というのがミソだった。
4.ちなみに裏の手段として、・・・誌の定期購読者リストを入手、人物を
特定し、その人物が宿泊する際は最上級の歓待を施す、というものもある。
私たちはその手段は採用しなかったが、そのリストは比較的簡単に入手できる
ものだった。
果たしてそのプロジェクトを始めた年は間に合わなかったが、翌年発表の
・・・誌には「アジアのベストホテル」のトップ10に私たちのホテルが見事に
掲載されたのである。
・・・もっともこれには後日談があるが、長くなるので省略。要するに
この手のプロモーションにはリスキーな面もあるのだ。

もちろん「週刊ダイヤモンド」のホテルランキング調査と、世界の
ビジネスマンを対象にする・・・誌のランキングではコンセプトも異なる
だろうし、同じ目線で単純に比較することは出来ない。
ただ大手メディアに掲載されるこの手のランキングなるものは、大抵上記の
ような操作・バイアスがかかっているものとみて間違いない。
そしてこれも当然だが、大手メディアのランキング調査の結果をどう評価
するかは、実際の利用者の裁量に委ねられることを忘れてはならない。
もっと言えば、こうしたランキング結果、情報を金科玉条のごとく
崇め奉っていると、メディアの情報操作に簡単に引っかかる可能性が
高くなるのではなかろうか。
要するに本物を見分ける目を養う事が肝心なのだ。

写真上から2番目は luxryhotel.com より。
3番目は帝国ホテル。
4番目は最近何かと話題のウェスティン東京。