を講ずることでリスクは小さく出来る。これは誰でも知っている。
ただしリスクをゼロに近づけようとするあまり、社会に無用な混乱や
風評被害を起こす結果になると、これは愚の骨頂だ。
新型インフルエンザが流行している先週、大阪と神戸に出かけた。
いつもは一日中通行人が絶えないヒルトン大阪からリッツ・カールトン
大阪に抜ける梅田の地下街が、閑散としている。
前後20メートル以内に私しかいない状態。
学校がクローズされ、イベントが中止になり、企業が緊急性のない訪問や
来客を自粛しているせいだ。
電車内の乗客のマスク装着率は70%。これは(ヒマな)私が何度も実測した
数値なので間違いない。
神戸では主なホテルや旅館での宿泊キャンセルが57,000人、宴会
キャンセルが470件約27,000人分に上る。
もちろん三ノ宮駅周辺も、通常の60-70%程度の人通り。
こんな看板を見かけた ↓↓
5月16日からマイアミで開催された"PowWow 2009"
(全米インバウンド商談会)では、日本の対応に疑問の声も上がっている。
開催直前になって日本からの参加者が大量キャンセルし、商談が成立
しなくなる事態が発生した。
またアメリカへの旅行客のツアー・キャンセルに伴うキャンセル料処理の
調整が難しくなっているのだ。
今回の新型インフレでは、国内旅行ではキャンセル料は取らないし、
取れないというコンセンサスが形成されつつある。
しかし海外旅行の場合、ツアーがキャンセルされれば、当然キャンセル料
が発生する。今回の新型インフルで大騒ぎしているのは世界中で日本だけ
だからだ。
逆のケースで、5月28・29日に横浜で開催される予定のインバウンド商談会
「トラベルマート」も、既に海外からのバイヤーが日本に入り各地を視察して
いる。
もし彼らがマスク装着率70%の関西を訪れたら、どんな印象を持つか
容易に想像できないだろうか?
マスク着用にしろ「自粛」すれば安心、インフル感染のリスクを減らせるという
心理は理解できる。
だが同時に自粛することでのマイナス・リスクについて、企業や団体は
どう考えているのだろう?
自粛が、「(新型インフルは)怖い」という認知を不必要に増大させている。
経済的、政治的、心理的な不必要な認知が増大すると何が起きるか?
BSE(牛海綿状脳症)では数多くのレストラン・焼肉店が、鳥インフルエンザ
では養鶏場が、SARSでは観光業が風評被害に晒され営業上の大打撃を蒙り、
数多くの関係者の自殺が出た事実がある。それもつい数年前のことだ。
リスク対策の失敗から起きた苦い経験から、我々はもっと学ぶべきでは
ないだろうか?
ちなみに我が家の家族はマスク着用はしない。
家族で色々議論はしたが、結局私の意見に皆同調してくれたからだ。
ところがそんな事情を知らず、登下校にマスクを着用していない我が家の
娘達を憐れんでか、近所のおばちゃんがマスクを差し入れてくれた。
今夜は「差し入れマスク」の扱いにつき、またまた家族会議を開かなくては
ならない。
「新型インフレ対策」「風評対策」に加え、「ご近所対策」もリスク管理に
含まれるとは想像もしていなかった次第である。
写真は上がFlikerのサイトより。
中がJR三ノ宮駅前の立て看板。献血量の減少という事態が
起こっているようだ。
下は同じく三ノ宮周辺のアーケード街。