シンガポールや欧米では一般的だが、ようやく日本では東京の都心に何軒か
見られるようになってきたようだ。
サービスアパートメント(以下SA)を私なりに定義してみると:
1.賃貸契約が基本的に1ヶ月単位から、と賃貸マンションに比べ短い
2.入居にあたり敷金・礼金・保証金が不要
3.家具付き
4.週に2-3回の割合での清掃サービス。リネン類の交換も。
5.フロント機能があり時にコンシェルジュが常駐。郵便物の預かり、
洋服クリーニングの受付、来客対応から、タクシー手配、各種チケット・
レストラン予約、ゴルフコンペ・文化サークル等SA内の親睦会企画運営
まで担当する
といったところだろうか。
加えてフィットネスセンターやプール、時にはスパを併設している施設も
ある。入居者は勿論利用は無料。
空間を貸すだけの日本の賃貸マンションと、コンセプトに大きな違いがある
ことがお分かりになるだろう。
東京で代表的なSAというと森ビルが経営する六本木ヒルズや愛宕グリーン
ヒルズMoriタワー(マリオットが運営受託)、シンガポール系のアスコット、
オークウッド、フレイザー等々があげられる。
これらから容易に想像できるように、SAは欧米企業の在日本駐在員とその
家族をターゲットにマーケティングを行っている。
実は上記の定義のうち、1-4は欧米人のライフスタイルそのものと
言ってよい。
定住・土地所有に価値を見い出す農耕民族・日本人にはなかなか馴染め
ないが、元来獲物を追いかけてありこち渉猟する狩猟民族の彼らにとって
SAはうってつけの住居なのである。
コスト面の一般的な比較として、プレステージの高い都心のホテルの
そこそこの広さの部屋を1ヶ月リザーブするとなると、200万円はかかる。
ところが同じ条件で周辺の森ビル系のSAを借りれば、100-120万円で
済んでしまい、ことらでもホテル暮らしよりリーズナブルといえる。
SAには部屋にキッチンやランドリー設備があるので、生活には
困らない。むしろ毎日メイドサービスや冷蔵庫チェック等でスタッフが
入れ替わり立ち代り出入りするホテル暮らしより、プライバシーがより
守られるのも事実だ。
経営する方としても、ホテルのような料飲施設や宴会場はもとより
不要。かつホテル・旅館に適用される消防法に準拠しなくても良い為、
各部屋にスプリンクラーを設ける必要が無く、建築コストが大幅に
削減できる。
もちろん料飲に関る人材も不要な上、基本的に長期滞在のお客ばかり
なので毎日の煩雑なチェック・イン、チェック・アウト業務も無い。
団体客も無論来ない。よってランニング・コストもホテルに比較して
かからない。
ところで先に挙げたシンガポールのアスコット系列のSA「サマーセット」に
続く第2ブランド「シタディーン」の日本1号店が、3月1日に新宿御苑に
オープンする。
厚生年金会館の斜め向かい、地下鉄の駅から徒歩3-4分という交通
至便の土地だ。
私は縁があって先日そこで試泊をしてきた。
オープン前なので部屋の写真の掲載は遠慮するが、ロビーの雰囲気で
このSAが明るく現代的なインテリアで統一されていることがお分かりに
なるだろうか?
スタッフの教育研修にもシンガポール企業らしくかなり熱心で、快適な
一夜を過ごすことが出来た。
つまり極めて快適な宿泊施設が新宿に新しく誕生したということで、私と
しては非常に嬉しい。
外国人駐在員をターゲットにして新規オープンが盛んな東京のSAだが、
昨今の円高基調でマーケティングの対象を国内にシフトせざるを得なく
なってきた。
果たして日本人のライフスタイルを、或いは長期出張といえば
「ウィークリーマンション」と相場が決まっていた国内企業の考え方を
SAは変えることが出来るだろうか。
写真は上がシンガポールのサマーセット・SA
下がシタディーン新宿のパブリック・スペース