場所は今年2月に廃業したホテル・フジタの跡地。
鴨川沿いの二条通り角、正面に比叡山や大文字等の東山36峰が望める
という、絶好のロケーションだ。
外国人を呼び込める外資系ホテルはこれで4軒目。京都にまた一つ
魅力的なアイコンができる事になる。
観光業が発展するには富裕層への浸透が欠かせない。
だが私は、京都は観光地としてあまりにも大衆化してしまったのでは、
と強く危惧している。
京都にはこれだけ魅力的なコンテンツがあるのにもかかわらず、宿泊客の
平均滞在泊数は約1.2泊。それも殆どが週末泊だ。
つまり大都市近隣のお手軽旅行先と何ら変わらないに等しい。
これでは週末の宿泊施設不足や平日との料金格差は解決しないし、
週末の交通渋滞も深刻化するばかりだ。
受け入れ側にしても、京都の魅力を疎外する要因は多い。
建物のデザインにしてもバラバラ。全く古都・京都にそぐわない。
嵐山には芸能人の名前を冠した安っぽい土産物屋、飲食店が軒を連らね、
先斗町(ぽんとちょう)は客引きが横行し遂にはキャバクラが進出した。
私がもっとも残念に思うのは、近頃流行の偽(にせ)舞妓だ。
一般客を相手に舞妓風の衣装とカツラを着付け、お手軽に舞妓さん気分を
味わえるというもの。
写真撮影だけならそれでも構わない。が、彼女らはアイスクリームを手に
街に繰り出し、時にはあの衣装で路上に三角座りしてタバコを吸っている。
知らない人が見たら、京都の舞妓さんのイメージが完全に崩壊するだろう。
偽舞妓をコンパニオンに仕立てお座敷に上げるという飲食店もある。
先日家族で出かけた先斗町の河床(ゆか)で、どこかの会社の飲み会に
呼ばれたらしい偽舞妓が一般客の前でポーズをとっていた。
私たちの隣にいた観光客は「あ、舞妓さんだ!」と喜んで写真を撮って
いたが、あの人たちは京都の芸舞文化を取り違えたまま帰ってしまう事に
なる。本物はお客に呼ばれての仕事中に、一般客の撮影は許可しない。
その時間帯は舞妓を買ってくれた(オーダーした)お客だけのものであり、
一般客に撮影されるという事はそのお客をないがしろにする、という
解釈からだ。彼女らの矜持と言えるだろう。
ニュー・ビジネスとしての偽舞妓は、商魂逞しい産物として評価する。
このコンテンツを楽しみに京都に来る観光客も多いと聞く。
だからこそ、そろそろルール作りが必要な状況になってきたのでは
ないだろうか?
市中はともかく、実際に舞妓・芸妓がいる京都の五花街(ごかがい)への
偽物の立ち入りは禁止すべきだ。
偽物から本物を守るのも行政の仕事の筈。
財務省・税関があんなに輸入偽ブランドの摘発に熱心なのだから、
国土交通省・観光庁、或いは京都市も景観保存という有形文化財だけでなく、
芸舞という無形文化財の保護に踏み切るべきだ。
それが結局「京都」ブランドを守ることにつながるのだから。
ちなみに少々目の肥えた京都人なら本物と偽物は一発で区別できる。
まず彼女達の立ち居振る舞い。要するに偽物は着物に慣れていない。
次に舞妓の髪は地毛と決まっているが、偽物はカツラ。
そして着物の質。本物が着る西陣の手織りの着物とレンタルの着物とでは、
近くに寄れば一目瞭然、雲泥の差がある。
断っておくが、私は高級品=本物の文化、などという価値観を持つ俗物では
ないつもりだ。
京都に限らず、土地土地の伝統・文化を尊重しプライオリティを
置かなければ観光業の振興などありえない、と言いたいだけなのである。
ザ・リッツ・カールトンのような世界的ブランドの進出に京都が選ばれた
事実に京都人は誇りを持って良い。
一方で、世界的ブランドのホテルが立地するに相応しい土地であるか
どうかも、京都人の努力にかかっているのである。
写真は上から
真ん中の建物がホテルフジタで、ザ・リッツ・カールトン京都建設予定地。
傍らを流れるのが鴨川。遠くに比叡山の雄姿を望む
(京都ホテルオークラ最上階レストラン「ピカレスク」より昨日撮影)
先斗町の四条通り側入り口
偽物舞妓さん
先斗町の河床(ゆか)より、お隣の河床を撮影
本物の舞妓さん。昨年8月27日のブログ「シ・ミ・ツの京都」に記載した、
ブライトンホテルでのイベントにて撮影
JNTOのHPより
ザ・リッツ・カールトン京都の完成模型
http://blog.excite.co.jp/naokoterada/15723518
→ホテルの記者発表の様子が記事になっている。興味のある人は
是非アクセスを